第6話
由梨の唇はひんやりとしていて。手はあったかいのに、不思議だなって、キスをしながら思っていた。
身体がすごく熱くなって、ドキドキして。ああもう、ずっと前からわたしは由梨に触れたくてたまらないのだ。まだ付き合ったばっかりだっていうのに、こんなことばかり考えちゃうわたしはどうかと思う。
ちゅっちゅしてるうちに、いつのまにかショーは終わっていて。なんだか名残惜しいな、という気持ちになりながらも、もうすぐホテルのディナーの時間なので、パークを後にする。
たくさん歩いたから、正直もう、全身の疲労もすごかった。パークにいたときはそうでもなかったけど、ホテルにチェックインして、ディナー会場で席に着いたら、もうだめだった。
ただでさえわたしはお酒に弱いのに、コース料理と一緒にワインを二杯くらい飲んだのも、いけなかった。でも、わたしは由梨との折角の夜だから、まだヘロヘロになるわけにはいかない。そう思って、気合を入れる。
「お風呂、先入ってきなよ」
部屋に戻るなり、由梨はそう言ってくれる。わたしがあまりにヘロヘロに見えたのだろう。
せっかくなのでお言葉に甘えて、先に入らせてもらう。熱いシャワーを浴びたらだいぶ頭がしゃっきりとしたので、バスローブを着て髪の毛を乾かしながら、由梨とお風呂を交代した。
髪を乾かし終わって、ベッドの上に寝転ぶけど、寝てしまわないようにしないと。だってもしかしたらこのあと、由梨とその、そういうことになっちゃうかもしれないんだし。
お気に入りのボディクリームを念入りに塗って、わたしのお肌はすべすべで準備はばっちり、なんだから。
由梨もわたしと同じように思ってくれているのか、やっぱりバスローブ姿でお風呂から出てきた。由梨はわたしよりも髪が長いから、ドライヤーで乾かすのにも時間がかかる。
でもなんとなくそれを待つのが寂しいからって、わたしは由梨の髪をブローさせてもらうことにした。
「え、そんな……どうしたの、いきなり」
由梨はなんだか照れた様子で、それがまた可愛い。ああ、はやく、ぎゅーってしたい。そう思って頑張って髪の毛を乾かしてあげた。
ドライヤーを片付けてきて、二人して同じベッドになんとなく座って。
ちょっとだけ、沈黙が流れる。
「あのさ、伶菜」
先に沈黙をやぶってくれたのは由梨だった。
「……しよっか」
何を、なんて聞くのは野暮な話だ。
返事をするより前に、わたしは由梨の唇を奪う。そのまま押し倒して、重なり合うようになって。
それから、由梨がわたしを抱きしめてくれる。ゆっくり、優しく。あんまり幸せだから、頭の中が真っ白になって、溶けちゃいそうで。
ふわふわ、ふわふわ。
ただひたすら甘い気持ちになって、それで。
その後の記憶なんて、なにもなかった。
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