短編:「くまさんvsふぇんりる」

桂枝芽路(かつらしめじ)

短編:「くまさんvsふぇんりる」

森の中。


「出たなふぇんりる!」

「何を身構えているのですかくまさん?私は平和的です」

「お前の話は聞いている!出会った者を次々と喰らっていると!」


ふぇんりるは考え込むように数秒黙った後、口を開いた。


「そのような噂を聞かない事はありません。しかしあなたはそれが本当だと思っているのですか?」

「なにい!?」

「私を僻む者がこの世には多いのです。しかし勝負を挑む事は確かです」

「勝負?」

「そうです。私が考えた勝負。負けたら食われます」

「やっぱり食ってるんじゃねえか!」

「勝てばいいのです。分かりやすいルールですよ」

「うるさい!その手に乗るか!」

「では、勝負を放棄したとして捕食しますね」

「このクマに勝てるとでも…うっ、なんだ、体が動かない…なぜだ…!」

「私はふぇんりるです」

「離せ!離せ!」

「仰せのままに」


くまはぜいぜいと肩で息をした。

まるで体全体が万力で締め上げられたかのような力がくまに働いたのだ。


「では、勝負しますね?」


くまに選択肢は無かった。


「なんだ、勝負とは!」

「じゃんけんです」

「じゃんけん?」

「そうです。分かりやすいでしょう?」

「ぐっ…俺はクマだぞ!パーしか出せない!」

「ではパーだけ出せばいいでしょう?」

「や、やめてくれ…」

「それでは、じゃん、けん…」


勝負はふぇんりるの負けだった。

パーしか出せないと思っていたふぇんりるはチョキを出したのだが、くまは両手を重ねてグーにしたのだ。


「意表を突かれましたが、今回はあなたの勝ちですね。また会える事を願っています」


ふぇんりるは背中を向けて立ち去った。


「とんでもねえ。二度と会わねえぞ!」


ふぇんりるの背中に向かってくまはそう叫んだ。



<終>

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短編:「くまさんvsふぇんりる」 桂枝芽路(かつらしめじ) @katsura-shimezi

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