67、その人
──あの日、≪パンゲア≫はいつものように殺伐とした空気が漂っていた。
「まずい。サナテ区画の≪グデンソン・ユニット≫がやられたらしい」
偽装区域に帰って来た仲間が早口に報告する。艦内通信が破断されて情報を足で稼ぐしかなくなっていた。
「奴ら、確実に俺たちを潰そうとしてる!」
「ここもそのうち……」
不安が異口同音に吐き出される。
「偽装区域を離脱させられないかな? ≪ゲラシオン・パーク≫みたいに」
僕はそう提案するが、すぐに却下されてしまう。離脱させるにはまだ偽装区域の拡張が必要だが、そこにリソースを割く余裕がここにはない。
「未来に託すしか……ないかもしれない」
女性の声がして、みんながそちらを振り返る。
その凛々しくも、慈しみ深い眼差しは僕たちに勇気と希望を与えてくれる。
歩み出たのは、マル──と同じ顔をした人。
──いや、僕が彼女を真似てマルを造ったんだ。
僕が造った君を知るたび 山野エル @shunt13
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