66、運命論

≪スノウ・ホワイト≫は≪パンゲア≫に残る唯一の冷眠装置だと教えられた。かつては需要があったらしいが、僕が生まれた時代では無用の長物だった。


「大きい装置ですね」


 半円筒が横倒しになった≪スノウ・ホワイト≫は僕たちよりも高さがあり、僕たちが手を繋いで両腕を伸ばしたよりも長さがある。


「僕はここで800年くらいの時を過ごしたのか……」


「マルよりもすごく先輩ですね」


 彼女の素朴すぎる反応に思わず笑ってしまう。


「800年くらい先輩だね」


「エルさんの大切な人は、エルさんに希望を託してこの冷眠装置に入れたんですよね」


「そうだね」


 マルが僕を見つめる。


「エルさんじゃなかったら、マルはここにいなかったですね」


 僕と彼女を繋ぐ運命のようなもの。


 彼女の眼差しが僕の意識を800年前に引き戻そうとする。

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