【没エピソード】壺を売った先輩たちの話

 母と父の葬儀に両方参加してくれた、伯母(母の姉)から聞いた話である。

 とにかく悪名高い「霊感商法」、その代表的な商品が「壺」だが、伯母は統一教会が壺を売るきっかけについて教えてくれた。

 これに関してはいろんな意見があると思うので、あくまで伯母という一信者から聞いた話であるという事だけはご了承いただきたい。

 伯母の話を聞いていると、どうやら最初は「韓国の伝統工芸品の良さを伝えて購入してもらう」というのが動機だったようで、統一教会の教義やその他の「霊的な意味合い」ありきで販売するという意図はなかったようである。

 それから、商品(壺)そのものも、韓国側から相当の仕入れ値で仕入れたものであり、元々が良いものなのだというのが伯母の見解だった。叔母の話の主な趣旨は、「壺はぼったくりのように言われるのだけは心外。仕入れ値は高かったのでそれには苦労したのだ」という点だった。


 確かに教会は、「リトルエンジェルス」など韓国舞踊の団体も持っているし、壺のような工芸品だけでなく、世界に向けて韓国文化を広めようという目的を持っていたのは確かである。

 父は若い時に「リトルエンジェルス」の日本公演チケットを売り歩いていたこともあるが、それを売る時に「この韓国舞踊を見ると先祖の霊が解怨されます」と言って売るような事はしていなかったと把握している。普通に芸術振興とか、日韓友好という名目だったはずだ。この延長上に「韓国伝統の工芸品」である「壺」は位置していた。


 伯母によると、高い仕入れ値の壺もそうだが、高麗人蔘茶なども含めて、「韓国本部から『売りつけられる』商品を、日本で売り切るのに相当苦労した」という認識だった。なんだかこれって、植民地というと言葉が悪いが、日本の統一教会は韓国本部から見るとそういう扱いだったんだろうなと思う。


 現代の一般企業に例えると、親会社と子会社の関係に似ている。

 私が勤めていたある商社の子会社での話だ。ある役員が親会社である商社から私の勤める子会社へ天下ってきて、自分の趣味を含んだ(ように見える)商品を開発・製造を指示した。当初は、ヨーロッパ向けに売ろうとしていたようだ。子会社である私の勤め先は、指示通り商品を製造したはいいものの、結局当てにしていた売り方が出来ず、商品の在庫をそのまま抱えることになった。発案者の役員本人は早々に別の会社へと異動してしまい、もういなくなっていた。

 結局は、優秀な営業社員が日本国内の小売業者に売り込んでなんとか在庫は捌かれた。商品はそもそもヨーロッパで売る事を想定していたため英語表記だったが、むしろそれを逆手に取って「輸入したおしゃれ雑貨」という体で売る事にしたらしい。付加価値というやつだろうか。

 しかし、本来はその商品を作ると決めたのは、私が勤めていた会社の社員ではなかったし、そもそも「海外のおしゃれ雑貨」という価値も、ある意味後になってでっちあげたものである。


 親会社が子会社に在庫を押し付けるというのは、割とよくある話なんじゃないかと思う。連結決算などの仕組みの変更で、在庫を押し付けるだけでは今はあまり意味がなくなったかも知れないが、今も商品を売り捌くという部分で親会社の業績のために手伝いをさせられる子会社が存在したとしても、あまり驚かない。というか、そのために子会社を作ったりもするだろうから。

 そう、もしかすると、日本統一教会というのは、韓国の商品を売るために作られた組織なのかもしれない。そう言われてしまっても仕方がない体制だ。

 霊感商法の問題の根本は、韓国本部から商品販売ありきの無理難題を押し付けられていたところから始まっていたのではないだろうか。

 無理難題からは苦肉の「付加価値」が生まれる。それは時に美談にはなるが、それが「霊感」という付加価値になると、厄介な方向に転がり始める。

 正直、今の体制がどうなっているのかは私には分からないが、改善がまだなのであれば、「韓国本部から植民地である日本教会に物を売りつける体制」をまず是正しないといけなさそうだ。

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