告白の練習してる所をS級美少女に見られたら、その日から何故か俺の告白の練習に付き合ってくれるようになった件
タカ 536号機
S級美少女相手に告白の練習
「おーい、どこ行くの?」
「……ちょっと用事」
「なんかお前最近学校終わりに用事多くない?」
「うん、なんか変だよ。相沢」
授業も終わり俺以外は部活があるので部活を準備している中、俺が教室からコソッと出て行こうとすると幼馴染である
「へ、変なとこなんてないだろ? お、俺はもう行くから」
「「やっぱり変」」
くっ、
「と、とにかくまた明日〜」
「「絶対になんかあるだろ(でしょ)」」
2人に捕まる前に俺は駆け出す。早く、あの場所にいかないと! あんまり待たせちゃいけない。 だって彼女は怒らせるととても怖いからっ。
*
「少し遅いわよ。相沢くん」
「ご、ごめん」
うう、やっぱり少し怒ってるかぁ。5分くらい待たせちゃったし失礼だったかもな。連絡くらい入れておけば良かった。
「まぁいいわ。過ぎたことはしょうがないわ、早速始めましょう」
「は、はい」
そして彼女は顔を上げるとそう言ってくれる。……やっぱり美人さんだよなぁ。
彼女の名前は山根
容姿はS級美少女とも呼ばれるだけあり、艶やかな黒髪が腰元まで伸びており行き交う人の視線を集める美しい瞳。
それにスタイルまでも完全に全ての女子が憧れるレベルのものを持ち合わせている。
正直、俺がこんなとこで会って話してるのも不思議なくらいの人物なんだが。
「す、好きです。付き合ってくださいっ」
「……うーん、35点かしらね。まだ声が上ずっちゃってるし初々しさが捨てきれてないわね」
「中々、告白までは遠いですね」
もっと不思議なことがあるとするなら、何故かそんな山根さんが俺の告白の練習に毎日付き合ってくれているということだろう。
本当になんでこんなことになっているのか?
今、思い返しても謎は多いがどうしても脳裏から焼き付いて離れない出会いであり、俺にとって人生で一番の黒歴史と言えるだろう。
*
「ら、雷火お前のことが好きだったんだ。付き合ってくれ!」
空き教室一杯に俺の声が響き渡る。ここは旧校舎の一室であり俺はこの日、先生から放課後この教室を使う許可を得ていたのだ。
「ちょっと違うか? やっぱり意外性に欠けるのかなぁ。テクニックとかでもサプライズ要素があるといいってあったしなぁ」
そう、全ては近々行う予定である幼馴染の雷火への告白を成功させる為っ!
本場もここで行う予定であり今日は下見を兼ねつつ練習を行ってい___。
「そうね、意外性にはかけるかもね」
「へっ!?」
うん? あれ? 俺以外はこの部屋にいないのに声が聞こえた……のか。いや、おかしくない!? というかそんなホラー現象なんて起こるわけないよなっ。
「奇遇ね。確か……相沢くんだったかしら」
「はい……キグウデスネ」
うん、知ってた。扉の方から聞こえてきてたって。正直、旧校舎だからってのもあって油断しまくりだったって。
でもさ、でもさ、まさかその相手があの山根さんだとは思わないだろっ。
「終わった。俺の学校生活終わった」
「なにをブツブツ言っているのか分かりませんが……私は別に他の方に言いふらしたりしませんよ?」
「ほ、本当ですかっ!? 女神様ですか!?」
俺は驚きのあまりそんなことを口走る。いや、実際この状況でそんなこと言われたら女神様にしか見えないんだけどな。
「私がめ、女神? いや、そうじゃなくてっ!
それより告白の練習……ですか」
「あ、あのあんまり口に出されると恥ずかしいんですけど」
言いふらされないとは分かっても、彼女に俺が告白の練習をしていたのを見られたという事実は変わらない。
「そ、それはごめんなさい。でも……あまり告白、上手くはなかったわね」
「ぐっ、否定する材料がないです」
山根さんにバッサリと言われてしまい俺はおし黙る。正論だからな。
「あの……」
「なんでしょうか?」
しばらく沈黙が続いた後、山根さんがおずおずと話を切り出してきた。
「もし、良かったら私が告白の練習に付き合ってあげようかしら?」
「へっ? い、い、い、いや大丈夫です!! その時間も取らせてしまいますし悪いですよ」
思わぬ提案に俺は慌てる。さすがにこんなことを言われるのは予想外だ。
「でも……あの様子だと時間がかかりそうよね」
「い、いやでも……」
「私にとっても告白される時の練習になるので無駄ということはないし、貴方にとっては美少女相手に告白の練習が出来るから大抵の相手なら物怖じせずに出来ると思うのだけど」
「……」
ヤバイ、否定材料がまるでない。というか自分で美少女と言い切るとは……あっ、いやなんか恥ずかしそうだ。さすがにキツかったのか。
「じゃ、じゃあお願いします」
「約束ね。放課後ここに来て毎日私のオッケーが出るまで練習すること。私が協力するからには失敗は許さないわよ」
しかし、山根さんはすぐにクールな顔を取り戻すとそう言って手を差し出した。握手……という事だろうか?
「じゃあ、改めてお願いします」
俺は差し出された手に対し手を差し出すと握手をする。
その日から俺と山根さんは放課後になるとこの教室へと集まるようになった。
*
「今日はここまでね。帰っていいわよ」
「ありがとうございました」
俺は目の前に立つ山根さんに頭を下げる。そして、誰かに見つかると山根さんにも迷惑がかかってしまうのですぐに去ることになっているので素早く教室で出ると去るのであった。
正直、山根さんが何故ここまでしてくれるのかは分からない。聞いてみたこともあるが答えてはくれなかった。そこだけが少し気がかりである。
*
「はぁ、今日ももう終わりかしら」
相沢くんが去っていってしまった教室で1人私はため息をつく。そして熱くなった体を抱きしめると必死に冷やす。
「今日も相沢くんから好きって貰えたっ」
嬉しさでニヤける顔を必死で手でつまむがおさまることはない。分かってる。あの告白は私に向けられたものじゃない。彼の好きな相手に向けられたものだ。
それでも私にとっては良かった。大好きな彼に例えそれが別の相手に向けられたものであっても好きだと言って貰えるのなら。
彼にとっての負けヒロインでもいい。好きだと言って貰えるなら。
あの日、彼が告白の練習を見てしまった日。
人生最悪の日だった。大好きな彼が別の人が好きなのは分かってしまった。
私じゃなかった、その事実だけが私の中を駆け巡った。
倒れてしまいそうだった。彼に話しかける機を伺っていた私にとってそれは致命傷に値するものだった。それでも私は残った力を振り絞り彼に話しかけた。
そして彼の告白の練習相手の座を掴むことが出来た。
練習中、何度も彼に好きだと伝えたくなった。その度に私は手に爪を食い込ませたりして自制してきた。優しい彼にとってそれは重みになるのは分かってたから。
それでも綾瀬 雷火。私なんて知らないでしょうがもし貴方が彼の告白に対し断りか曖昧な返事を返すのであれば……私はもう自分を自制したりなんてしない。全力で彼を落とす。
それが負けヒロインの私に出来る最後の足掻きだ。
*
「色々、考えたけど……シンプルに伝えることにした。好きだっ! 付き合ってくれ、雷火!」
俺は頭を下げ手を差し出す。山根さんとの練習3ヶ月を経て俺は変わった。出来ることは全てした。後はもう
「……ウソつき」
「えっ」
しかし、雷火がボソリと漏らした言葉に俺は思わず固まる。なにがだ!? どういう意味なんだそれは。
「ウソつきっ!!」
「雷火……」
俺が慌てて顔を上げるとそこには顔を真っ赤にして泣いている雷火が立っていた。
「俺は嘘なんてついて___」
「もういいから、相沢がさ山根さんのこと好きなの知ってるからっ! いつもここでっ、2人きりで好きだって伝えてたの知ってるんだからっ」
「それは練習でっ」
「うるさいよっ。からかうのもいい加減にしてよ! 相沢なんて大嫌い」
「雷火っっ!!!?」
俺はなんとか雷火を宥めようとするが雷火は俺の言葉など聞くことなく走り去っていってしまった。
「そんな、そんな……」
俺は呆然としその場で固まってしばらく動けない。相沢なんて大嫌い、その言葉だけが俺の脳内を支配する。
振られた。その揺るぎない事実に足が震える。
「頑張ったわよ、相沢くん」
「山根……さん?」
するとどこからか見ていたのか出てきた山根さんが俺を抱きしめた。
「私は好きよ。だから私と付き合って相沢くん。相沢が綾瀬さんを好きなままでも構わない。だから付き合って」
「山根さん!?」
山根さんの思わぬ告白に思考停止していた俺の脳が再び動きだす。もう、雷火には振られてしまった。
それなら山根さんの気持ちに答えるのもありなんじゃないか? そんな気持ちが出てくる。
でも、気持ちもないのに付き合うなんて失礼じゃないのか? 同時にそんな思いも出てくる。
「私はね、ずっと好きだったよ」
「山根さん……」
山根さんに更にそう囁かれてしまい俺はっ、俺はっ。
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し〜らない。1話完結なのでここで終了。良かったら星や応援お願いします。カクコン短編参加です。なんとか残りたいです。
では!
告白の練習してる所をS級美少女に見られたら、その日から何故か俺の告白の練習に付き合ってくれるようになった件 タカ 536号機 @KATAIESUOKUOK
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