第36話 希望
此処は竹乃宿の離れにある人間収容施設。
此処にはアルカナを扱う関係者が個室に個別で収容されていた。
「ん……?」
その収容施設の個室にいる1人、
「確か、急に眠くなって……あれ?此処は……?」
綺羅は周りを見回した。シンプルな和室に似合わぬ堅牢そうな木製の扉。外の様子を見れるものは何一つ無い。
「えーと……」
綺羅は必死に頭を働かせ、何が起こったかを思い出そうとする。
「……あっ、そうだ!確かあの時、急に眠くなって……そこで現れた竹乃武士があたし達を捕まえて……!って事は……あたし、竹乃一族に捕まったって事……?」
ようやく状況を理解した綺羅は、明らかに絶望的な状況を前に肩を落とした。
「あたし、カード使えないから何も出来ない……あーもう!他の皆んなみたいに道具を出せたら何とか出来たかもしれないのに……!もう!竹乃一族め!」
綺羅は何も出来ないもどかしさに思い切り悔しがり、拳で床を何度も叩いた。
「…………いや、確か漫画とかだと、捕まえたアルカナバトラーが外に逃げ出さないよう、持ってたカードを全部取ったりしてたよね……もしそうだとしたら、皆んなも何も出来ずにいるのかも……」
だが綺羅は皆んなの状況を想像し、自分と同じ状況になっているのかもと理解し少し冷静になった。
「他の皆んなもカード取られて、あたしと同じように何も出来ずに困ってるかもしれない……」
他に捕まってしまった仲間を思い浮かべ、珍しく弱気になる。
「一体どうしたら……」
綺羅は悩んだ。とにかく少しでも自分に出来る事は無いかと必死に考えた。
「全然思い浮かばない……けど、あたしにも何か出来る事がある筈!何もしなかったら何も起こらない!とにかく何かして少しでも状況を動かさないと!」
だが、弱った仲間が脳裏に浮かんだ綺羅は、少しでも状況を改善する為にその場から立ち上がった。
「まずは自分の持ち物を確認しよ!えーっと、何か無いかな……」
綺羅は何か使えるものがないかと、制服に付いているありとあらゆるポケットを探った。
「やっぱり、ポケットの中身も全部没収されてる…………ん?」
綺羅が落胆したその時、スカートのポケットに何か薄いカードのようなものが入っている事に気付いた。
「あれ……?」
ポケットから出てきたのは1枚のアルカナカードのパックだった。
「何でアルカナカードが……?パックなら買ったらすぐ開けてるのに……」
不思議に思ったが、今はとにかく何か打開策が欲しかった綺羅は、この謎のパックを開けてみる事にした。
「『ダークエルフ』『ケルベロス』……」
出て来たカードを次々と確認する中、1番最後に妙なカードを発見した。
「あれ、このカードだけ真っ白……」
よりによって印刷ミスが出た。本来ならがっかりする所だが、綺羅は何故か白いカードから目が離せなかった。
「……あっ!色がついてく……!」
手に持っている白いカードにじわじわと色が広がっていく。
やがてカードには、広大な宇宙と、そこに漂う鎧のような物を着た人型の輝く生物が現れた。先程まで真っ白だったカードは、綺麗なイラストが描かれたアルカナカードになった。
「綺麗……!」
カードの名前の欄には『ライトアロー』と書かれていた。イラストの筈なのに、カードの向こうに見える宇宙の星の一つ一つが輝いて見えた。
『キラ』
「……えっ?」
カードを眺めていると、何処からともなく綺羅を呼ぶ声が聞こえてきた。
「……もしかして、ライトアロー?」
綺羅は手に持っているカードに声を掛けた。すると……
「うわっ!?」
手に持っていたカードが眩しく輝き、カードに描かれていた人型の生物が中から飛び出して来た。
「えっ……?何……?!」
驚く綺羅の前、人型の生物はニコニコしながら宙に浮かんでいた。
『ボク、ライトアロー!キラのアルカナ!』
学生鞄サイズの人型生物『ライトアロー』は、満面の笑顔を綺羅に向けながら自己紹介をした。
「……ラ、ライトアロー?私の……アルカナ……?」
『キラ、ボクを見つけてくれてありがとう!ずっと会いたかったよ!』
「…………」
綺羅は言葉を失った。色んな感情が混ざり、頭の中が真っ白になる。
「……あ……あのね……」
『なあに?』
綺羅は目の前の相手に何とか言葉を絞り出していく。
「会い……会いたかったって……こっちのセリフだよ……っ!!」
綺羅は今の状況を何もかも忘れ、目の前に現れた自分のアルカナを抱きしめた。
綺羅が幼い頃にアルカナカードを知ってから、ずっと待ち望んでいた光景だった。
「ありがとう……!ライトアロー、私の所に来てくれて本当にありがとう……!」
『えっへへー!どういたしまして!』
綺羅とライトアローは、暫しの間時を忘れてハグをしたのだった。
アルカナバトラー @takenomatu
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