第35話 竹乃宿の内部

「まずはそっとゴコを呼び出してくれ」


「分かった」


 和香里は鞄からゴコのカードを出した。カードの中のゴコは状況を把握しているのか、両手で口を覆いながら和香里を見つめていた。


「ゴコ、そっと出て来て」


 和香里はゴコを場に呼び出した。すると、和香里の隣に口を塞いだゴコがスッと現れた。


「…………」


「ゴコ、今は喋るだけなら大丈夫だ」


「そっか」


 覇気に指摘されたゴコは塞いでいた手をパッとどけた。


「ゴコ!会いたかった……!」


「おおっ!ワカリ、大丈夫か?」


 和香里は隣に現れたゴコに抱きついた。ゴコはまだ状況が把握し切れていないのか、少し不思議そうにしながら和香里の頭を撫でていた。


「和香里、とにかくまずは仲間を救助しに向かおう」


「分かった!」


「おう!」


「だが、その前に2人の格好を変更させよう。『転写』で2人の学校を『竹乃乙女武士』に変更する」


 覇綺がカードを使用し、私とゴコの姿を竹乃一族の姿に変えた。


「おぉ〜」


「女性版竹乃武士って感じだね。覇綺、ありがとう」


「よし、大丈夫そうだ。では急いで収容施設に向かおう」


「分かった」


「おう」


 和香里とゴコは急いでベッドから出ると、覇綺の後を追って休憩室から出た。


「(わぁ……物凄く大きい和風宿って感じ……)」


 竹乃宿の中は全体的に和風で廊下が物凄く広かった。


「(しきりに周りを見回さない方がいい。俺達の会話は漏れないが、仕草で怪しまれる)」


「(あっ、ごめん……)」


 私達が早歩きをしている間も竹乃武士とすれ違うが、私達の事を気に留める武士は1人も居なかった。


「(この廊下の突き当たりにある扉の先は収容施設に繋がっている。施設内に入ったらこの地図で現在地を確認し、手分けして仲間の元に向かおう)」


「(分かった)」


 和香里は覇綺から地図を受け取り、懐にしまい込んだ。


「(もし竹乃武士に出会い、何処に所属しているのか、何の仕事をしているか尋ねられたら「新入りなので分からない」と言っておけ)」


「(分かった……あのさ、覇綺)」


「(どうした?)」


「(この一連の出来事は、竹乃姫を倒せば本当に全て解決するの?)」


「(解決する筈だ。だが、竹乃姫の元に向かう為には幾つか試練がある事も分かった)」


「(試練……?)」


「(竹乃宿の最上階に竹乃姫が居る。だが、たどり着くまでの道中に竹乃一族四天王が配置されている」


「(竹乃一族四天王……?)」


「(竹乃武士の中でも特に強い奴らだ。彼ら4人は様々な試練を侵入者に課し、最後に待ち受けている四天王を倒さなければならない)」


「(それってつまり、4回試練をクリアして4回中ボスを倒さないといけないって事?)」


「(それだけでは無い。四天王を倒したら最後に『竹乃大将軍』が現れる。竹乃大将軍の能力で強化された竹乃一族の大群を引き連れ、侵入者を徹底的に叩きのめす)」


「(大群!?それ大丈夫なの!?)」


「(大丈夫だ。これも全て何とかした)」


「(何とか……えっ、何したの?)」


「(後で分かる。そして竹乃大将軍の後は竹乃姫との戦いだ。竹乃姫は常に竹乃一族を召喚する、竹乃姫の支配下である竹乃一族は強力で、更に竹乃宿の効果も合わさる。竹乃武士数体に囲まれたら流石のアルカナでもあっという間にやられてしまう)」


「(だから仲間が必要なんだね……)」


「(そうだ)」


 そんな会話をしているうちに長い廊下を歩き終え、ついに扉の前まで来た。


「(よし、じゃあ早速行こう!)」


「(そうだ、その前に和香里に一つ伝えておく)」


「(えっ?)」


「(今は向こうに俺の分身も捕まっていてな……今現在、その分身を施設内で暴れさせて竹乃武士を集めている所だ。だから和香里、向こうで暴れる俺を見かけても無視して構わない)」


「(分かった!とにかく仲間の救助最優先って事だね?)」


「(そうだ。では行くぞ)」


「(よし!ゴコ、行くよ!)」


「(おう!)」

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