第34話 まさかの再会

「……おい……起きろ……」


「うーん……あと5時間……」


 眠る和香里を起こす誰かの声。


「欲張り過ぎだ。和香里、寝ぼけてないで起きろ……」


「ん〜?」


 誰かに軽く揺さぶられ、和香里はようやく重い瞼を開けた。


「何……」



 目の前に竹乃武士が2人いた。



「うわーっ!?!?」


 和香里は叫んでその場で飛び起き、その際に天井に思い切り頭をぶつけてしまった。


「落ち着け和香里」


「えっ、私の名前……?」


 目の前の竹乃武士は何故か和香里の名前を理解して呼んでいる。不思議に思った和香里だが、目の前の竹乃武士の仕草や声に妙な既視感を覚えた。



「……覇綺?」



 和香里は目の前の竹乃武士に恐る恐る呼びかけた。


「そうだ。よく分かったな」


「えっ!?本当に覇綺……って、そもそも此処どこ……?」


 見た目は恐らくカードで変更したのだろうが、それよりもこの薄暗い見慣れない部屋自体に疑問を抱いた。


「此処は竹乃宿の仮眠室。今はサイレントで俺達の音を消しているから叫んでも平気だ」


「そっか、良かっ…………竹乃宿?」


 和香里は竹乃宿という名前に覚えがあった。


(喫茶店での作戦会議にそんな名前が出たような……)


「竹乃宿、竹乃姫の拠点だ」


「き、拠点……えっ、マジ……?」


「本当だ」


 どうやら眠っている間に竹乃姫の拠点に運ばれたらしい。


「私、助かったんだ……忍者の服を着てたから……」


「和香里は竹乃一族の仲間だと思われて仮眠室に運ばれたようだな」


 和香里は今も忍び装束を着ている。なので例え覇綺だろうが初見では正体は分からない筈だ。恐らく覇綺は何らかの手段で和香里の正体を見抜いたのだろう。


「和香里の鞄を抱えたまま眠る忍者が運ばれていくのを見てな……まさかと思って確認したら、本物の和香里だったとは……」


「鞄……あっ」


 周りをよく確認すると、枕元に私の鞄が丁寧に置かれていた。


「それにしても、まさかこんな形で侵入出来たなんて……それと、捕まっていた覇綺が無事だった上に再会出来たのは本当に良かった……」


「捕まった振りをした。ツルギに俺の分身を作らせ、相手がそれを追いかけ回している隙に俺達は竹乃武士になりすまして敵の本拠点に侵入した。竹乃一族や拠点の情報を集め、いつでも反撃出来るよう準備を進めていた」


「凄……もしかして、魔法使えたのってツルギの特技?」


「その通りだ、ツルギはありとあらゆる力を無効化出来る。だから誰よりも自由に動けた」


「流石覇綺……」


 どうやら心配は杞憂だったらしい。覇綺の想像以上の活躍に和香里は心の底から関心した。


「和香里もこうして拠点に侵入し、俺と再開出来ただろう。所で……他の仲間は何処に?」


「あっ……そ、それが……」


 和香里は喫茶店で起こった出来事を覇綺に全て伝えた。


「…………全員さらわれた?」


「うん、突然皆んな眠りだして……武士に持ってかれて……」


「そうか……味方が近付いて来たらそれとなく手助けする予定だったが……」


「ごめん!私達がもう少し早く喫茶店に行ってれば、皆んな早めに地下室に避難出来たかもしれないのに……」


「いや、これも想定範囲内だ。助ける手立ては十分ある」


 覇綺は仲間を助ける所まで想定していたようだ。


「恐らく他の仲間は、この拠点から少し離れた所にある収容施設に連れてかれた可能性が高い」


「他にも建物があるんですか?」


「ある。和香里、手伝ってくれるか?」


「勿論!」

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