第17話 この人生をあなたに
ミハイルに連れて行かれたのは、可憐な野花が咲く、美しい花畑だった。
「二百年前に初めて出会った花畑に似ているだろう?」
「ええ、なんだか懐かしい気がします……」
さあっと爽やかな風が吹いて草花を揺らしていく。
「ミハイル……それに、カイン。二百年前も今も、私を救ってくれてありがとうございます。貴方がいてくれたから、私はこうして笑っていられます」
カインは穏やかに微笑んで、ルナリアの髪を愛おしげに撫でた。
「……二百年前、私がミハイルだったとき、君を召還の術から守り切ったら伝えたいことがあったんだ。それを今、聞いてくれるか?」
「はい……」
カインはルナリアの手を取り、瑠璃色の瞳を真っ直ぐに見つめる。
「ルナリア、私の人生すべてを君だけに捧げる。君がいなければ、生きていけないんだ。心から愛している。私の妻になってくれないか?」
カインの熱のこもった真剣な眼差しに、ルナリアの鼓動が速くなる。
一度目の人生で、彼は己の人生をルナリアと再び出会うために捧げた。
そして二度目の人生も、ルナリアに捧げると誓ってくれた。
彼の愛の深さを知り、喜びと、どうしようもなく愛おしい気持ちが涙となって溢れる。
「はい、もちろん……! 私も、この人生を貴方だけに捧げます」
カインが嬉しそうな、でも泣き出しそうな表情で微笑む。
その形の良い唇が、潤んだ瞳でカインを見上げるルナリアの口元へと近付き、ゆっくりと触れ合う。優しく、深いキスだった。
色とりどりに咲き乱れる花々が、愛し合う二人を祝福するかのように、風に揺れていた。
二百年の恋 〜王子に裏切られた令嬢は過去へと追放される〜 紫陽花 @ajisai_ajisai
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