第18話 やっぱりランニングすると奴はいるの巻
三原君の相談を受けてから数日が経ち、日曜日となった。
「う――ん、今日もいい天気だなぁ!」
私は快晴の空を窓から眺めつつ、伸びをする。今日ほど気分が良かったことはあんまりないだろう。
「取り合えず体操でもするか!!」
私は体育の授業で行う順序で体をゆっくりとほぐしていく。ストレッチは時間をかければかける程、効果があると私は思っている。気持ちが落ち着くし、何より身体の調子を測れるからだ。
「なるほど、今日の身体はこんな感じかぁ」
一通りストレッチを終えた私は首を回しながら両腕を回転させる。数分経った後、クマをモチーフにした目覚まし時計を手に取り時刻を確認する。
「七時半かぁ。ちょっと早起き過ぎたかなぁ」
目覚まし時計を確認した私は、二度寝をするか考える。しかし二度寝をしてしまって目的の時間に遅れてしまったら迷惑をかけてしまうだろう。
「仕方ない。今日はちゃんと起きていよう……ふぁぁ………」
私は欠伸しながら階段を一段ずつ下りていく。
リビングに到着すると、お母さんが料理を作り始めていた。
「おはよう、接那。今日は早く起きたわね」
「ふわぁ………おはよう、お母さん…………」
「取り合えず、顔洗ってきなさい」
「りょ――かぁ―い」
私は口を開けつつ、洗面所へと向かう。
一枚洗顔用のタオルを取り出した後、蛇口をひねり頬や額を集中的に洗った。
「うん、問題なし! 絶好調だ!!」
私の顔は今日もモチモチだ。早寝遅起きのたまものだろう。
そんなことを想いつつ鏡を眺めていると、お父さんがやってきた。
「おはよう、接那」
「おはよう、お父さん! 今日もかっこいいね!」
「お、ありがとうなぁ――!」
「ちょ、それは辞めて」
気分の良かった私が誉め言葉を言うと、眠そうなお父さんが笑みを浮かべながら頬を近づけてくる。間違いない、お父さんか小学生か幼稚園児にやるような頬すりをやろうとしている。あれは髭が当たると痛いからあんまり好きでは無い。
そう思った私はお父さんに対し嫌だという気持ちを伝えた。それを聞いたお父さんは残念そうな顔をしつつやめてくれた。気分の良かった私がお父さんに対して誉め言葉を口にすると、頬を擦り付けようとしてきた。お父さんの髭はチクチクしていたいのだ。それ故に頬ずりは何としても避けたいのである。私がお父さんの希望を断固拒否するような姿勢を取ると、しゅんと悲しそうな表情を浮かべていた。
「接那、ご飯できたわよ――」
「は――い! じゃ、お父さん。先行くねー―」
私はしょんぼりした様子のお父さんの横を通り、リビングに向かった。今日の料理はお米とワカメが入ったお味噌汁、卵とソーセージの炒め物だ。
「美味しそうだね! 作ってくれてありがとう!!」
「ふふっ、どういたしまして」
お母さんは照れくさそうな笑みを浮かべている。やはりこういう言葉をかけてもらえると嬉しいようだ。今日の私は不思議と褒める言葉が口から漏れ出していた。
私のテンションが高い理由は単純だ。今日、皆で荒畑さんの試合を見に行くことになったからである。あの時はみんな断るかもしれないと思いつつ提案したが、二人とも快く受け入れてくれたのだ。
「とりあえずご飯食べ終わった後はランニングに行くよ」
「分かったわ、けど食べた後は食器片づけなさいね」
「ん、分かった! それじゃ、いただきます!!」
私は両手を合わせてからご飯を食べ始める。まず最初に口に運ぶのはワカメのお味噌汁だ。ずず――っと音を鳴らしながら飲むと体の中に温かさと味噌の風味が広がっていく。やはり朝は味噌汁に限る。そんなことを想いつつ、卵とソーセージの炒め物を口に運ぶ。
数回咀嚼すると、ソーセージの肉汁と卵の甘みが口に広がった。いつものご飯と同じように美味しいが、今日はいつも以上に美味しく感じていた。
「ご馳走様でした!」
料理を食べ終えた私は食器を持ち、流し台へと持っていく。その姿を見たお母さんは私の顔を見つつ「珍しいねぇ。今日は空から槍がふってくるのかしら」と冗談を言った。
「えぇ……私そんなに手伝ってないように見えるぅ?」
「えぇ。アンタはご飯食べたら軽く歯を磨いてランニングに行っちゃうじゃない」
私は今迄の行動を振り返ってみた。なるほど、お母さんの言う通りかもしれない。これからは最低限人並みの行動は出来る様になろう。そんなことを感じた。
「取り合えず、時間あるしランニングいってくるよ」
「車に気を付けてね。それと、歯磨きは忘れずにね」
「は――い」
私はご飯を食べに来たお父さんに道を譲ってから、洗面所に入り鍵を閉めた。
「まず歯磨きからだなぁ」
私は三面鏡の化粧台から緑色の歯ブラシとミント味のチューブ型歯磨き粉を取り出し、にゅるりと塗り付ける。歯磨き粉を元の場所に戻した後、歯ブラシを軽く水に濡らし口の中へと挿入した。
黙々と口の中を磨いた後、私はコップに水を汲みガラガラと声を出しながらうがいする。使った歯ブラシを水で流し何時も置かれている場所へ戻した後、私はグレーの半袖シャツと黒色の短パンを身に着けた。最後に白色の靴下を履いた私は一度自分の部屋に戻りポーチにスマホと千円札をしまった。
「よし、こんな感じで大丈夫かな」
用意し終えた私は階段を降り、玄関へ着いた。
そのままトレーニングシューズを履く。
「それじゃ、行ってきます!」
元気良くそう言った私は笑みを浮かべつつ玄関を開ける。
次に私の視界に入ってきたのは――
「おはよう、接那!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます