第14話 このポジションやったことなぁいっの巻!
私は今、三原君と共にセンターサークルに並んでいます。三原君とともに輪の中へと入ると、辺りの人達がざわついています。「Seaside」と胸元に書かれた紫色のウェアに白色のサッカーパンツ、紫色のソックスと黒と赤で構成された脛当ての格好が浮いていたのでしょうか。
私は顔を赤くしながら、下を向きます。
すると、三原君が「大丈夫?」と私の肩を軽く叩いてから質問してくれました。
私は彼の顔を見ると共に服装をあらためてまじまじと見ます。彼は、「祭」と背中に書かれた緑色のウェアに白色のサッカーパンツ、青色のソックスに白色の脛当てを身に付けていました。
私の恰好よりも目立つ人がいるから大丈夫だなと瞬時に思いました。
そんな言葉は口に出さないようにしつつ、私は三原君にお礼を伝えます。
「大丈夫。ありがとう、体調を気遣ってくれて」
「いいよ。それに、今回はガチ個サルじゃなくあくまでエンジョイだからね」
私は、三原君にそう言われた後事前に調べていた情報が頭の中に浮かんできました。
どうやら、個人フットサルにはガチ個サルとエンジョイという二つがあるようです。エンジョイ系は基本的に男女混合で行われ、サッカーやフットサルが好きな人達が集まって盛り上がりながら試合するという形式です。
それとは対照的に、ガチ個サルは関東リーグというFリーグとは別のフットサルリーグでプレイする選手や、高校サッカー選手権で県優勝を経験した選手などが集まり、バチバチに試合する形式です。
高テクニックのプレイや試合展開を見れるので観戦にはうってつけですが、実力が伴っていないときに気まずい状況になってしまうためなかなか難しいものです。
幸い、今回はエンジョイフットサルという形式なので私は胸をなでおろしながらほっと安堵しました。
すると、一人の男性が手を一度叩きます。
その男性は、二十代前半で頭は刈り上げています。そして、「堅実」と胸元に書かれている服に黒色のスポーツパンツ、黒色のトレーニングシューズを履いていました。
「はい、時間になりました。どうも、初めましての方は初めまして。私、本個サルの代表者を務めさせていただいている、
隅家さんは私の方をちらりと見た後、説明を開始し始めます。
「今回のフットサルの試合は一試合8分。5人対5人で行われます。試合中、ボールが出たら4秒間の間でキックインを行っていただきます。ゴールの横のラインを越した場合、攻めの選手が触っていた場合はゴレイロのボールスローで試合を再開します。逆に守りの選手が触った場合は攻めるチームのコーナーキックで再開です。また、皆様にはフィールドプレイヤーとして長く楽しんでいただきたいため、一番最初は一番番号の低い方にゴレイロを務めていただいた後、4分後に次に番号の低い方にゴレイロを務めていただきます。また、女性へのハイプレスや無駄な体の接触はイエローカードを出しますので男性陣はご注意ください。それでは、メンバー決めを始めます」
隅家さんが丁寧な説明を参加者の皆さんに行った後、メンバー決めが行われました。今回の参加者は20人だったため、きれいに4チームで別れました。そして、運よく私は三原君と同じチームになりました。
「同じチームになれてよかったです。よろしくお願いいたします。霧原さん」
「あ、うん。よろしくね、三原君」
私達は少ないコミュニケーションを交わしながら、同じチームである証として紫色のビブスを着用します。私は1番。三原君は3番でした。私はビブスの向きを一度間違えたため、着なおしてからストレッチを三原君とともに行います。
そんな時でした。
私の目に赤色のビブスを着ている黒髪の男性がうつりました。身長174cm程度で黒色のスポーツパンツ、黒色のトレーニングシューズを履いているのが分かります。その人物は、首を2回ほど回した後リフティングを両足で始めていました。
右足へ、左足へ、右足へ、左足へ。
交互にボールは移動していますがその人は一切その場から動いていません。
周りの人達もその方へ注目しています。そんな中でした。
「おーーい、そろそろボールこちらへ渡してくれ――」
隅家さんがリフティングを続けている男性へ声を掛けます。すると、その男性は頭を超えるようにボールを右足で蹴り上げると、左足を軸にして回転をしてからインステップキックでボールを下から擦り上げます。ボールは設置されているゴールを超え、センターサークル内で立っている隅家さんの元へと向かっていきます。
そのボールに対し、隅家さんはボールが一瞬バウンドした瞬間に右足をボールの上に振り下ろします。
直後、ドンという音とともにボールの勢いが殺されていました。隅家さんはボールを引いてから右足を下に入れて浮かせます。そして、浮遊状態になった威力のないボールを右手でワンハンドキャッチしてからこのように伝えます。
「それじゃあ、今から紫ビブス対赤ビブスの試合を始めます」
「どうやら一番最初に試合が行われるようですね。緊張しますが、張り切っていきましょう」
「う、うん。そうだね」
私と三原君は、ピッチへと向かいます。その最中、私は一つ気になっていたことがあったため三原君に対して質問を行いました。
「あの赤ビブスの人って、もしかしてだけど……荒畑さん、なの?」
「……それは、君が判断することだと思う」
私は三原君の曖昧な回答に対し、不思議な感情がわいてきました。
それは、三原君に対してではありません。
これは恋という心でもなければ、好意という感情でもないのです。
ましてや憎しみという感情でもなければあこがれという感情でもありません。
それは、透明な気持ちでした。
「いかんいかん、集中集中!!」
ともかく、私はあの人かもしれない人物の前でみっともないプレーをしていいはずがありません。
私は自らの頬を叩き、自分自身に渇を入れます。
コート内に入ると、紫色のビブスを着ている2人の女性が話し合っています。二人とも20代程度の女性でした。
私達が女性達へ近づいていくと、先ほどまで話をしていた笑みを浮かべ、三原君に質問しました。
「あれ、慎吾君。もしや今日は彼女連れ?」
「いや、違います。彼女は僕と同学年の霧原接那さんです」
「は、初めまして。霧原接那です」
「接那ちゃんね。ふふ、初々しくて可愛らしいじゃない」
「か、可愛い!?」
私は、ランニングヘッドバンドをつけている女性から直球でそのように言われ、赤面します。
きっと、年齢や身長などの面からそのように言われたのでしょうがやはり小恥ずかしいです。
「あ、そうだ。折角だし、私達の自己紹介を行わせていただくわ。私の名前は
「分かりました」
私に可愛いと言ってきた女性は、しゅんさんというようです。一つ編みの黒髪に鼠色のヘッドバンドをつけています。Oceanと胸元に書かれた青色のウェアの上から3番と書かれているビブスをつけており、青色のサッカーパンツを着ています。
また、青色のソックスに白色の脛当てを付けていました。
先ほど軽く会話をしましたが、どうやら声量が中々あるようです。
三原君曰く、しゅんさんは男性顔負けのドリブル能力を持っているようです。
次に自己紹介された人物は、
また、ピンク色のソックスに赤色の脛当てをつけています。どうやら、フットサルは社会人から始めたらしいです。
実力的には、浮いているボールを確実にトラップすることが出来るぐらいの実力はあるようです。
最後に紹介された人物は、
三原君曰く、初参加者だから特にわからないと言っていました。
私は正直驚きましたが、試合の時にはそんなことなど言っていられません。
私達は即興でフォーメーションを決め試合に臨むこととなりました。
三原君曰く、今回組んでいる松山さんとはペアを組んだことがあるため安心できると言っていました。
しかし、想定外の出来事が発生しました。
なんと、私がGK的ポジションであるゴレイロになってしまったのです。
個人フットサル 試合メンバー
赤ビブス
ピヴォ:不思議な男(男性)
右アラ:
左アラ:
フィクソ:
ゴレイロ:
紫ビブス
ピヴォ:2番
右アラ:4番
左アラ:3番
フィクソ:5番
ゴレイロ:1番
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