第69話

 ハルキが咳き込んでいるうちに、キョーカの姿が見えなくなっていた。


「くっそお! どこに行きやがった?!」


「わかんないっすよお」


 ドーーーーン!


 その時、ビルの上階から爆発音がする。


「なんだ?!」

 ハルキたちが上階を見ると、ファンドリールのビルの上階からモクモクと黒煙が上がっていた。


「おい! あれ見ろ!!」

 ビルの上部から炎が噴き出している。


「やべえぞ! あいつら自爆するつもりだ。イッコ! お前たちは上階へ。『アブソス』との繋がりが分かる資料があるぞ」

 イッコとホリは急ぎ上階へ向かい他の隊員たちも最上階のフロアへと向かっていく。


 ハルキはキョーカを探しながらニッタに話しかける。


「ニッタ! 俺たちは地下を探すぞ!」

「ういっす」

 と答え、二人は急いで階段を駆け下りていった。


 ――――――


 地下に移動したキョーカはモニターを見ながら呟いていた。


「それにしても、国家情報保安局を動かすなんて、一体どうやって……」


 気配に気づきキョーカが振り向くと


「よぉ、見つけたぜ」

 そこにはハルキとニッタがいた。


「どうしてここがわかったの?!」


「ああ、このビルには隠し通路がいっぱいあるからな、そのどこかが隠し部屋に繋がってんだろうなって思ってたんだよ」


「あら、そうなの? 意外と頭いいのね。それで? どうするの? 私を捕まえても何も出てこないと思うけど」


「ああ、そうだろうな。あんたに聞きたいことがあるんだよ」


「まあ、何かしら?」


「あのオルサスってやつは何をしようとしてるんだ?」


「ふふふ。素直に教えると思ってる?」


「いいや、まあ難しいとは思ってるけどな。このまま国家情報保安局に連れていかれるのも癪だからさ、ちょっと聞いてみた」


「あはははは、本当に面白いわね、あなた達。いいわ、少しだけ教えてあげる。私たちの目的は『世界を元の姿に戻す』ことよ」


「その意味がちょっと分かんねえんだわ。お前たちカタデリー信仰がなんで今回オルドゥアズ教の地の神の『聖石』を狙ったんだ?」


 ハルキの一言にキョーカの目の色が変わり、怒りの表情で睨みつける。


「それこそが神への冒涜! 本当に愚かだわ! あの方々の偉大さが分からないなんて、人間どもはなんて愚劣な生き物なのかしら?!」

 キョーカの怒りの声を聞いたハルキは冷静な声で話す。


「ああ、そうかもな。だけどその言い方だとお前は自らが神だと言いたいようだけどなあ。ふざけんじゃねえぞ!」

 ハルキの怒声が響く。


 キョーカはその言葉を聞いてさらに怒りを増していく。


「私が神などとおこがましい。まあ理解もできないでしょうけど、まあいいわ、ついでに教えてあげる」


 そしてキョーカは両手を広げ天を見上げながら言い放つ。


「『聖石』は自身なのよ。あなた、気づいてるんでしょう?」


 と言うと突然辺り一面が暗くなり、世界が変わる。


 そして、次の瞬間、轟音とともに黒いモヤが現れキョーカに集まっていく。


 そして、そこに立っていたのは、真っ黒な体をした大きな髑髏だった。


 その姿を見たハルキは驚きながらも、ニヤリとした笑みを浮かべ、キョーカに向かって話し出す。

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