第68話

 ハルキはニヤリと笑うと、キョーカに言う。


「いいぜ、その喧嘩買った。かかってこいよ」


 その言葉と同時に、ハルキは銃を抜き、ニッタは慌てて両手を挙げる。


 その姿を見てキョーカはクスッっと笑いながら言う。


「いい度胸してるじゃない? まさかこんな展開になるなんて思ってなかったわ。でもね、これはあなたのミスよ。私の力を甘く見過ぎよ」


「それはどうかな? そりゃ俺たちを舐めすぎだよ、キョーカさんよぉ」


「あら? どういうこと?」


「ああ、俺にはわかるんだよ。お前の本当の力がな。俺はそれを引きずり出すために来たんだ。こんな兵をいくら集めても無駄だよ」


 その時、玄関から多くの国家情報保安局の兵がファンドリール本社になだれ込む。


「なに?! どういうこと?!」

 キョーカが狼狽えていると


「只今より、ファンドリール本社への強制捜査を行います! 全員その場に武器を捨て投降しなさい!!」

 とイッコが叫び、ハルキに向かってウインクをする。


「いや~、間に合わないかと思って冷や冷やしたぜ」

「遅くなりました。何とか間に合ったようですね」


「絶妙。すげえな、お前、待ってたんじゃないの? このタイミング」

「何を言ってるんですか、あの女の驚く顔を見たくて待っていたなんて訳ないじゃないですかあ」


「あははっ、そうか。んじゃあ始めるとするか!」

「はい!」


「ニッタァ! 行くぞ! ユウジたちに連絡しろ!」


「うぃっす!」


 ユウジとアキのバディも裏手から侵入を開始し、トーコとシゲルは屋上から侵入を始める。


 ――――――


「国家情報保安局を動かしてたんですねえ。でもどうやったんだろう? たしかファンドリールの圧力で動かせないとか言ってなかったですか?」


 ―――ああ、おそらくファンドリールに対してではなく『アブソス』関連として動いているんだろうな。


「ああ、なるほど、で、そっちの圧力がかかる前に先手を打ったってことですねえ」


 ――そういうことだ


「さすがですねぇ。やることがハルキさんですねえ」


 ――――――


「連絡が入りました、アキさん」


「ああ、まさか国家情報保安局を動かしていたとはねえ。ああ、イッコとホリを使ったのかい、やるねえ」


「それじゃあ行きましょうかぁ」


「あいよ」


「突入!」


 ユウジとアキのバディは裏手から乗り込み、次々と兵を倒していく。


「な、何事だ?!」

「て、敵襲だ! 応戦しろ!」

 兵たちは慌てるが、既に戦闘態勢に入っているイレイサーたちに対し、動揺している兵では太刀打ちできるはずもない。


 ハルキはキョーカを見据えるとニヤリと笑い、銃を構える。


 キョーカはその表情を見て一瞬ひるむも、すぐに気を取り直しハルキに叫ぶ。


「あらあら、ずいぶん大掛かりなことしてくれるじゃない? そんなに死にたいのかしら?」

 キョーカの言葉に、ハルキはニヤッとした笑みを浮かべたまま答える。


「ああ、お前を殺して、俺は生きて帰る」


「ふふっ、なかなか面白いこと言うわね。でもね、あなたには無理よ。じゃあね」


 キョーカが指をパチンと鳴らすと突然ハルキの周りに大量の煙が立ち込める。

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