第67話
イレイサーたちはそれぞれ持ち場に付きファンドリールを偵察する。
トーコとシゲルは屋上から監視をしている。
シゲルが双眼鏡を覗き込みながら言う。
―――トーコ、ハルキたちは?
「ああ、ハルキさんたちは正面から乗り込むらしいですよ」
―――何を考えているんだ? まあ、ハルキらしいがな
「ですよお。ハルキさんはあれでいいのです。私たちは事が動き始めてから」
―――ああ、そうだな。
そう言って監視を続ける。
一方、アキとユウジのバディはファンドリール本社の裏手に回り監視を続けている。
「アキさん。近いです」
「なに言ってんだい。あんたは病み上がりなんだから、無理しちゃいけないだろ?」
「いえ、もう復帰していますので配慮は無用です」
「ほんとに可愛いのに可愛くないねえ。しかしハルキのバカは正面から乗り込むって正気じゃないねえ」
「ええ、私がバディなら絶対に止めます」
「あはははは、そうだねえ。それで何度も助けられてるねえ。まあでも、あいつには何か考えがあるんだろうさ」
「そうですね」
「それじゃあ私はあっちに行くよ。お互い頑張ろうじゃないか」
「はい」
「それとね」
「なんですか?」
「危なくなったら必ず私を呼ぶんだよ。いいね」
「……はい」
「よし! 良い子だ。行ってきな!」
「はい!」
二人は別方向に散開する。
ファンドリール本社ビル 正面入口 ハルキとニッタがビルの正面入り口の前に立っている。
「ハルキさん」
「ん? なんだ?」
「これ、ヤバいっすよ。完全に罠っすよ」
「わかってるよ! んなことより、お前はちゃんと俺の指示通りに動けよ」
「へーい」
「返事!」
「はい!」
「行くぞ」
ハルキがドアノブに手をかけようとしたその時、突然扉が開き中からスーツ姿の女性が出てくる。
女性は微笑を浮かべながら二人に話しかけてくる。
女性の名前はキョーカ・クチガ。
「よう、キョーカ」
「あら、こんにちは、ハルキさん。今日はどうしたのかしら? 私に用がある時にはアポを取ってって言ったわよね?」
「すまねえな、ちょっと急ぎだったんでな」
「何の用かしら、私、今から政治家とのパーティなんだけど」
「ああ、知ってるよ」
「あら? そうなの? あなたが私のスケジュールを知っているなんて珍しいこともあるものね」
「ああ、お前のことだからな」
「ふーん、ところで後ろの人は確か」
「あ、どうも、ニッタっす」
「なんだよ、お前その挨拶、締まらねえだろ?」
「ダメっすか?」
「いや、ダメじゃねえけど」
「あははははっ。面白い人ね。それで? どういったご要件なのかしら?」
キョーカの問いにハルキが答える。
「ああ、お前から預かったあの封筒な、あれを調べてもらったんだよ」
「で? それが何か? 私はあなたにあの封筒を渡した、それだけよ」
「あれがお前の力なんだろ?」
キョーカの顔色が一瞬変わるがすぐに笑顔に戻り、いつも通りの口調で言う。
「あら、なんの話かわからないわね。それにそんなことを言いに来たわけじゃないんでしょ? 早く本題に入ってちょうだい。でないと、せっかくのドレスが台無しになってしまうわ」
そう言うと、ビルの上階からファンドリールの雇った兵が次々と降りてくる。
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