第66話

 ――――――その夜


 イレイサー事務所ではイレイサーたちが集まっていた。


「帝都での『アブソス』拠点制圧はだいたい終わったんすか?」


「ああ、そうだねえ。ユウジも復帰したし順調だね」

「ええ」


「ほんと、アキさんとユウジさんの動きがすごいっすね」


「まあトーコとシゲルは負傷しているしな、私たちが頑張らねばな」

「ええ」


「ほんとに口数が少ないんですね、ユウジさんって。うちのシゲルは姿も見せませんけど。なかなかお会いできないので会えてうれしいです!」


 ―――トーコ、無駄口をたたかず、報告書を早く仕上げろ


「なんなんですか、シゲルも手伝ってくれればいいじゃないですか!」


「ほんとだよ、なんでお前、事務所でも姿見せねえんだよ、いい加減にしろよ。おい、ニッタァ! お前も喋ってないで手ぇ動かせっ!」


「へーい。でもほんとツノダさん、どこ行っちゃったんでしょうねえ? 全然姿見せないんすよ、なんかおかしくないですか?」


「知らねえよ。どうせどっかで飲んだくれてんだろうよ」


「そうっすねえ」


 報告書を仕上げながらイレイサーたちが話していると、突然ドアが開きツノダが飛び込んでくる。


「ハルキ―! ハルキ、ハルキ! 大変だよ!」


「うるせえなあ、見つめながら何べんも呼ぶな! なんだよ、近っ、近いよ!」

 ハルキは顔を引きつらせながら答えるが、ツノダはハルキの両肩に手を乗せ名前を叫び続ける。


(((ツノダさん、その距離感は気持ち悪いですよ)))


 全員が心の中で思うが声に出す者はいない。


「捕まったんだよお!」


「何が? 誰が?」


「俺が! ファンドリールに呼ばれてキョーカ社長に会いに行ったら!」


「なんだと! どういうことだ?!」


「国家情報保安局からの呼び出しでファンドリールに行けって言われて、またお前の苦情だなあと思ってさ、行ったら、こう、でかいのが! 黒いのが! あーっ! ってなって、 ウオー! ってなって、んでまあ、ちょうどそこにあの、あれがって、んで、助かった」


「全然わかんねえよ! 落ち着けよ! んで? キョーカはなんだって?」


「ああ、あれ、お前、ヤバいぞ。あれはやべえよ。マジやばいよ」


「だから何がだよ? ちゃんと説明しろよ」


「えっと、だから、あー、あの女、キョーカはやばいんだって」


「はぁ?」


「いや、だから、あのな、キョーカな、なんかあるぞ」


「ああ」


「ああ、ってお前。ああ、ってお前!」

 ツノダはハルキの肩から手を放すと頭を掻きむしりながら叫ぶ。


「んで? どうすんの、ツノダさん」

「どうすんっすか?」


「まさかこのまま泣き寝入りってこたあないよな?」

「いや、うーん、どうしよう?」

「あんたが決めないでどうすんだよ!」

「やるしかないよなあ、でもなあ、また苦情がなあ」

「どうすんだよっ?!」


「あ、はい。指令ね、はい。わかったよ、わかったから」

 ツノダは咳ばらいをし、真面目な顔をする。


「諸君、指令だ。ファンドリール本社に眠る遺物の確認及び必要があればイレイスしてくれ!」


「「「「ラジャー!」」」」

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