キョーカ

第63話

 ―――――― 数日後 イレイサー事務所


 ハルキはデスクで報告書を書き、ニッタはソファに座って携帯端末で音楽を聴きながら寛いでいる。


「しっかしすごいっすねえ。なんちゃってうまいこと行ってますよね、拠点の制圧」


「なんちゃってってなんだよ」


「まあでも、アキさんユウジさんのバディとトーコさんシゲルさんのバディが動いてますもんねえ。あ、ナツキさんとユカさんのとこも動いてるんでしたっけ? いや、これだけのバディが一つの事件に動くのって久しぶりじゃないっすか?」


「まあそうだけどな。ん? なんだ? ニッタも拠点の制圧やりたかったのか?」


「オレじゃないっすよお、ハルキさんが暴れたかったんじゃないかなあと思ったんすよ」


「んー、俺は別に暴れたいわけじゃねえんだけどなあ。でもまあ、俺が動くまでもなく全部終わってくれりゃいいけどな」


「ハルキさんはホント、こういう時は動きたくないっすよねえ」


「うるせえなあ。いいんだよ、これが俺たちの仕事なんだよ」


「はいはい、そうっすね」


「そう言えば、ニッタ、お前、最近、胸の魔道具のメンテナンスに行ってないだろ?」


「あー、これっすか?」

 そう言って自分の胸元を触る。


 ニッタの胸には『青い聖石』があり、ニッタの心臓の役割を担っており、通常年に一回程度のメンテナンスが必要だと言われている。


 さらに、今回の戦闘でオルサスから紫の霧を受け、青い聖石がそれを内包してしまっている。


 戦闘後、目覚めてから特に変わった様子は見られないが、ニッタの状態が気になるところである。


「そうなんすよねえ。なんか、なかなか時間がなくって。まあこれが片付いたら行こうと思ってるっす。ハルキさんも一緒に行きましょうよお」


「あ、ああ。そうだなあ、久しぶりに俺も行くかなあ」


「いいっすね。でも、本当にツノダさんは優秀っすねえ。なんでこんなに的確に拠点情報が入って、きっちり潰せるんっすかねえ?」


「お前、知らないの?」


「え? 何をっすか?」


 不思議そうな顔をしてハルキを見つめる。


「あのな、あれ。全部、イッコとホリさん」


「え?」


「全部イッコとホリさんからの情報。あ、これ秘密らしいけどな。あのおっさん、どんな手を使ったのか知らんが、あの二人から情報を得てるんだってよ」


「マジっすか! 全然知らなかったっす!」


「まあ、あのふたりはちょっと特殊だからなあ」


「へー、しっかしそんなこともあるんっすねえ」


「ないよなあ、普通。あれじゃないか? イッコもキョーカの事が気に入らなかったんじゃねえか? ま、面白いからもっとやれ! って言っといたけどな」


「ハルキさん、ほんとひどいっすねえ、んじゃあ、やっぱりツノダさんは肩書上偉い人って事でいいんすかね?」


「なんだよそれ。まあ、いいんじゃねえか? その通りだしなあ、って、ツノダさん、どこ行ったの?」


「さあ? 朝からみんな探してんっすけどねえ。どこにもいないんっすよ」


「ほんっと困ったおやじだなあ。いつも何にもしないんだからこういう時こそ事務所でドカッと座って指示くらいしろってなあ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る