地下遺跡深部

第53話

 トーコとシゲルの二人がさらに奥に進むと、広い空間に出る。


 その中央には台座があり、その上には何かが置かれてあった形跡があり、祭壇のようになっていた。


 その周りはきれいに片付けられており、まるでつい最近まで誰かがいたかのような感じさえ受ける。


 トーコはその様子に違和感を覚えながら辺りを見回していると、ふと壁に目を留める。


 そこには大きな肖像画が掛けられており、そこに描かれている絵を見て、トーコは驚きの声を上げる。


 その絵画にはカタデリー教の地の神とされる蜘蛛の絵が描かれていた。


「え? 」

 思わずトーコが声を上げる。


 ―――どうした?


「いえ、この絵なんですけど、これは明らかにカタデリー教団の物ですよね?」


 ―――うむ、そうだな。だがどこかで見たことあるような気もするが。


「そうなんですよねえ。私もどこかで見ている気がするのですが」

 しばらくその絵を眺めていると、額縁に書かれている文字を見つける。


《神に仕える我らが同胞よ 汝の身は我が下に 汝が命運は我が手に 聖石の寄るべに従い この意 この理に従え》


 トーコは一瞬眉をひそめるが、すぐにその意味を理解する。


「これって……」


 そう思った瞬間、祭壇横の空間に歪みができ、黒いローブに紫玉の杖を持つ男が現れる。


「ほう、以前出会った者とは違うようだが。まあよい、見てしまったのだなそれを」

 とトーコに向けて杖を振り上げる。


「あなたは何者なんですか? どうしてここに?」



「我が名はオルサス。この遺跡にあるものは我らの物、立ち去らぬのであれば、お前たちにはここで消えてもらおう」


 男はそう言うと、杖をかざす。


「そう簡単にはいきません!」


 トーコはそう叫ぶと、腰に差した剣を抜き、呪文を唱えようとするが、それよりも早く、シゲルがトーコの前に飛び出し、刀を抜きそのまま斬りかかる。


 キンッ!


 という音と共に火花が散り、シゲルの刀は弾かれる。


 ――こいつ強いぞ!


 シゲルは即座に飛び退き、距離を取る。


 すると今度はトーコが右手に持った剣に魔力を込めると、白い光がほとばしる。

 そして、一気に間合いを詰めると、上段から振り下ろすが、それもまた同じように弾き返される。


「なんて力なの!?」


 トーコは後ろに跳び、いったん態勢を立て直すと再び前に出て、袈裟懸けに斬ろうとする。


 ガキッ!!


 と音がして再び激しい衝撃を受ける。

 その反動で、トーコの手からは血が流れ出す。


「くっ、さすがに硬いわね。でも!」


 トーコは再び攻撃に移る。


 今度は左下からの逆風、そこから右斜め上に切り上げ、最後に胴薙ぎの一閃。

 それら全てをオルサスは受け止めていく。


 トーコの攻撃が終わると、今度はシゲルが攻撃を仕掛けるが、それも軽くあしらわれてしまう。


 オルサスはシゲルの攻撃を捌きながらトーコにも魔法を放つ。


 トーコはシゲルの前に立ち、両手を前に出して呪文を唱え、二人の目の前に光の盾が現れ、その攻撃を受け止める。

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