第52話
「んで? あの化け物はなんだって?」
「んー、あんまり覚えてないんすけど、初めはなんか、誰かに飼われていたらしいんですけど、気が付いたらあそこにいて、いつも黒い奴らにいじめられてたって。もう苦しいから助けてって言われたっす」
「そっか」
「はい」
「しかし、あんなのがいるなんてなあ」
「ええ、驚きました。あれは何だったのでしょうか?」
「さあな。ところで、なあデュアン君、この領でのカタデリー信仰の状況はどうなってる?」
「はい、それは」
デュアンが言うには、現在、領内では表立って信仰されていることはないという事だった。
「なるほど、それで地下か」
「まさかカタデリー教団の仕業なのですか?! ハルキさん、実は十六年前の父の死もカタデリー教団の仕業ではないかと思っているんです」
「なんだと?! って、まあ、じゃあ確定かあ。ニッタ、その骨、きちんと弔っとけよ」
ハルキが言うとニッタは砂の中の頭蓋骨を両手で抱きかかえ洞窟の隅に運び穴を掘り始めた。
「デュアン君、さっきの話、もう少し詳しく聞かせてくれるか?」
「はい、父が亡くなった時、私はまだ幼かったのであまり詳しくは覚えていないのですが、あの時も、今回のファンドリールと同じようにペイドルの資源開発を謳った会社が参入してこようとしていました」
「そこで父が反対したので話し合いが決裂し、武力衝突になったと聞いています」
「なんだよ、結局同じパターンかよ」
「ええ、そうですね」
「でも、今回は決裂してないっすよね? アルネラさんが操られちゃってましたけど」
「お前は本当にデリカシーがないなあ」
「ハルキさんにだけは言われたくないっす」
「はぁ?! 俺は繊細だぞ」
「どこがっすか?!」
「あの、それで今回も何かしらの事件に巻き込まれたのでしょうか?」
「ああ、そうだな。おそらくな」
「おそらく?」
「いや、はっきりさせるにはやっぱ行かなきゃあな」
「どこ行くんっすか?」
「ファンドリールに決まってんだろ」
「いやいや、イッコさんたちに関わるなって言われたじゃないっすか」
「前にも言ったろ、あれはガンガンやれって事なの!」
「ああ、そういえばハルキさんはそう解釈してたっすねえ」
「うるせえよ。ま、その前にあっちがどうなってるか次第だけどな」
「ん? トーコさんたちっすか?」
「ああ、あいつらがいれば問題ねえとは思うんだけど、念のため確認しとくか。デュアン君ももう戻っても大丈夫だと思うよ」
「そうなんですか?」
「ああ、俺たちの仲間がそっちは解決してる頃だと思うぜ」
デュアンはホッとした表情を浮かべる。
ハルキは立ち上がり伸びをしながらニッタに向かって言う。
「んじゃあま、先に領主館に行ってそっからファンドリールだな」
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