第51話

 グギャアアアアア!!


 そして次の瞬間、ハルキ達のいる地下室に轟音が響き渡った。


 ニッタが振り返ると、ハルキとデュアンが立っている場所から数メートルのところで土煙が立ち上っていた。


 おそらく先程の怪物が放ったであろう攻撃によってできたものだろう。


 ニッタは自分が立っていた地面が大きく陥没しているのを見てゾッとした。


「こいつは?!」


「わかんないっすよお、でもなんか苦しんでるっす!」


「ああ? 苦しんでる?!」


「はいっ! 苦しそうっす」


「どうすんだよ?!」


「いや、だから、助けようと思ってっ!」


「どうやってだよ?!」


「それはっ」

 ニッタは言葉に詰まる。


 すると、ハルキがニッタの前に出て言った。


「おい、ニッタ。お前が何をしたいのか知らねえけど、やるしかねえぞ!」


「で、でも!」


「どのみちあの化け物は俺達に襲いかかってくるだろ。そうなったら俺達は死ぬしかねえだろ? 殺らなきゃ殺られるぞ」


「ハルキさん!」

 そう言って見つめるニッタにハルキは力強く言う。


「あー、もう! わかったよ! おい、ニッタァ」


「はーい!」


「もう少し弱らせねえとどうにもできねえ、お前のライフルで遠隔攻撃しろっ!」


「へーーい」

「返事ははい、だっ!!」

「は、はい!」


 ズダーーーン!


 ズダーーーン!!


 ニッタのライフルの弾丸が次々と撃ち込まれていくが、怪物の動きは鈍らない。


「くっそ、効いてねえぞ?!」


「はぁ? 嘘でしょ?! これでだめなんすか!」


「おいおい、マジかよ」


 二人の攻撃もほとんど効果がない様子で、怪物は暴れまわる。


「おい、ニッタ。もっと近づかねえと無理かもしれねえ。いくぞ!」


「え?! いや、ちょっ、待っ」


 ハルキはニッタの腕を掴むと、怪物に向かって走り出す。


 そして、二人はそのまま勢いよくジャンプし、空中で回転しながら怪物の頭部に同時に蹴りを入れた。


 グガアッ?!?!


 その衝撃により、その巨体が地面に倒れ込む。


 着地した二人はすぐにその場を離れ、再び距離をおく。


 その間にも、ニッタは射撃を続けるがやはり効果はないようだ。


 ハルキはふと、自分の足元を見るとそこには、先ほど蹴飛ばした際に魔獣から剥がれた破片があった。


 それを拾い上げ、じっと見つめる。


 ハルキはそれをおもむろに投げつけた。


 ドゴォッ!!!


 破片は大きな音を立てて壁にぶつかる。


 その途端、怪物はビクリとして動きを止めた。


「ニッタァ! そいつと話せるか?」


「やってみるっす!」

 そう言うと動きを止めた魔獣に近づき、手をかざした瞬間、ニッタの全身が青く光りはじめ、魔獣の頭部から無数の糸が伸び、ニッタの手の周りで円を描き始める。


「な、なんですか? これは」


「あー、イレイサーの特殊能力って事にしとく。デュアン君、これ、内緒ね」


 数秒後、ニッタの目から涙がこぼれ落ちると、青い光が消えていき、無数の糸は魔獣に戻っていく。


「ハルキさん。もういいっすよ」

 そう言うとニッタはその場に倒れ込む。


 ハルキはニッタを抱きかかえながら、よく頑張ったと言い、懐から『オーシャン・スティール』を取り出し引き金を引く。


 次の瞬間、打ち出された青い光が魔獣の額を貫く。


 ギャアアアアアアアアアア!!!


 叫び声とともにその体は砂となって崩れ落ち、そこには何かの動物の頭蓋骨が一つ転がっていた。

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