第48話
「これでもダメですか。なら次は――」
トーコが次の手を繰り出そうとした時、巨大蟻は口から酸のようなものを吐き出してきた。
それを咄嵯に身を屈めて避けると、巨大蟻はターゲットを変え、そのままアルネラの方へ突進していく。
巨大蟻がアルネラに飛び掛かったその時、シゲルがその前に躍り出ると、両手でその顎を受け止めた。
ぐぅっ!!
シゲルの顔が苦痛で歪む。
「シゲル!」
「構うな!」
とシゲルは叫び返す。
「はい!」
トーコはそういうと、アルネラの元へ駆け寄りながら呪文を唱え始める。
そして、その手に持った剣を天に掲げると、巨大蟻の頭上に巨大な氷柱が落ち、蟻の体に突き刺さる。
その威力は巨大蟻の体を貫くだけではなく、貫通して地面に突き刺さった。
巨大蟻は全身を痙攣させ、やがてその巨体は塵となり崩れ落ちる。
痛みに顔を歪めるシゲルを見つめ、ローブの男たちの方に振り返ると
「あなた達。許さないですよ」
冷たい目でトーコがローブの男たちを睨みつける。
ローブの男達は一瞬怯んだが、すぐに立ち直り
――殺せ!
と命じてきた。すると、穴の中から先ほどと同じ巨大蟻が何匹も這い出してくる。
そして、その蟻たちはトーコへと襲い掛かっていく。
トーコは巨大蟻たちを一瞥すると
「もう許さないと言ったはずです」
とさらに冷たい視線を投げつけ、その瞬間、彼女の体が光に包まれ、その髪は銀白色に変わり、瞳は青色に輝いていく。
その姿をまずいと見たシゲルは痛みをこらえながらアルネラを抱え入口を出て扉を閉める。
「あ、あの、トーコさんは?」
「ああ、大丈夫だ。彼女は今、怒りに任せて力を使っている。一緒にいる方が危険だ」
扉の向こうから小さく轟々という音と叫び声や悲鳴が鳴り響いている。
――――――
部屋の中から物音が消えるとそっと扉を開ける。
室内は完全に凍りついており、巨大蟻たちの姿はどこにもなかった。
シゲルは中に入りアルネラを床に下ろすと、そのまま自分も座り込んだが、体はあちこち傷だらけになっており、血が流れ出ている。
トーコはそんなシゲルの様子を見ると、急いで自分の服を破って包帯代わりに巻き付け、正面に座るとその顔を覗き込む。
シゲルは大丈夫だと笑おうとするが、その顔は青ざめており、額には脂汗が浮かんでいた。
「ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい」
「いや、俺が悪いんだ。お前の忠告を聞かずに飛び出した」
シゲルはそういうと目を閉じてしまう。
トーコはそのシゲルの手を握り、回復魔法をかけると、体が淡い白色に輝き、その光がシゲルの中に吸い込まれていく。
「ありがとう、すまんな」
トーコは涙を浮かべながら首を横に振る。
「私のせいです。私がもっと早く動けていればこんなことにはならなかったのに」
「まあ、そう言うな。結果的には誰も死ななかったし、怪我も大したことはない」
「でも」
「それより、あいつらは?」
「あ、はい。きちんと氷漬けにしておきました」
「流石だ。なら安心だな」
シゲルはほっとした表情で微笑み立ち上がり男たちを解凍するように言う。
トーコは小さくうなずき、氷漬けの男たちに手をかざすと氷は溶け始め、男たちが動き出す。
その動きはかなり鈍く、どう見ても戦える状態ではなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます