第49話
トーコが男たちの前に立ち
「どうします?」
と問いかけると、怯えきったリーダーらしき男が口を開く。
「何が聞きたいんだ?」
「そうですねえ、色々とありますけど、とりあえずここに来た目的を教えてもらえます? それとあなたたちが盗もうとしていた物について」
「それは……」
男は言い淀んでいる。
「言わないなら、ここでまた氷漬けになりますか?」
「わ、わかった。話すから殺さないでくれ」
「じゃあ、話してもらえます?」
トーコは冷たい目で男の話を黙って聞いていた。
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「つまり、あなたたちは依頼されてこの遺跡にあるという宝を盗みに来たと?」
「そうだ。しかし、まさかこんなことになるとは」
男は大きくため息をつく。
黒フードの男たちは帝都でアキたちを襲った者と同じ『アブソス』という組織で全員、手首に蜘蛛の紋章が刻まれている。今回の目的はこの遺跡に眠るとされる古代の秘宝で、その力は一国を滅ぼすことができるほどの強力なものであると依頼主から聞かされていたらしい。
「そうですか。その依頼主というのは?」
「俺たちは聞かされていない。ほ、本当だ! 嘘じゃない!」
「仕方ありませんね」
トーコはそう言うと再び男たちを氷漬けにした。
「あ、あの」
アルネラが言うと
「ああ、大丈夫ですよ。こういう人たちは意識があると碌なことにはなりませんから」
とトーコはにっこりと笑いかける。
「この部屋から盗み出された物、わからないですよね? アルネラさん」
「はい、私にはわかりかねます」
「そうですよね。それでは、まずはこの部屋を調べましょう」
二人はそういうと、部屋の中を探索する。
「この部屋は…… そうですか、そういう事ですか」
と、トーコが呟く。
「もういいのか?」
「ええ、だいたいわかりました。アルネラさんは屋敷に戻って待機していただけますか?」
「え、ええ。それは大丈夫ですけれど」
「ああ、そこの氷漬けは後で運びます。私たちはあの穴の先に行ってきますので、よろしくお願いしますね」
アルネラはトーコの気迫に押されるようにして、素直に従うことにした。
――――――
穴の中に入るとトーコは手を前に突き出し、呪文を唱えると掌から光の玉が現れ、それが通路の奥へと進んでいく。
そして、しばらく進んだところでシゲルが尋ねる。
「結局領主屋敷の地下遺跡、あそこは何だったのだ?」
「ああ、あそこはジンスレールの乱の名残と魔獣大災害後の帝国地下施設の名残でしたね」
「ジンスレールの乱と魔獣大災害だと?」
「ええ、おそらくあそこには古代帝国の遺物が残されていたんだと思います。例えば、半年前にハルキさんが壊しちゃった鎧のようなモノとか。さらに魔獣大災害の時にはシェルターとして機能していたようです」
「ああ、あのハルキのバカが遺物ごとイレイスした鎧か」
「ええ。あそこにあったのは初代皇帝ハルム・ザハドの遺物ですね。なぜカタデリー教団がそれを狙っているのかはわかりませんが。そしてもしかすると半年前の鎧もカタデリー教団が関わっているのかもしれませんね。謎がいっぱいです」
そう言ってトーコは首を傾げる。
「まあ、それもこの先に行ってみれば何かわかるかも知れんな」
シゲルはそういうと足早に歩き始める。
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