第45話
「いなくなったろ」
「何がっすか?」
「あー、もうめんどくせえなあ。いなくなったろ? 博物館職員のハイアット! グネトラス考古学博物館のミイラ騒ぎの時にさ! あれ、オルサスが持ってた杖、なくなった副葬品の杖だぞ」
「えええええ??!!」
「だからさっき言ったじゃねえか。博物館から杖を持ってったあの黒いローブを着た奴はハイアットだ。つまりだ、その男は俺達が追っているオルサスと同一人物だ。間違いねえ」
「うそっす!」
「本当だよ」
「でもなんでそんなもんがここにあるんっすか?! あれ、カタデリー教団の仕業でしょ?」
「ああ、ってことは、だ。ファンドリールとカタデリー教団は繋がってる。ファンドリールって大企業を隠れ蓑にしてカタデリー信仰の復活をもくろんでるって事だろうよ」
ハルキの言葉にデュアンは驚きの表情を見せ、ニッタも呆然としている。
「ただな、気になる事はある。デュアン、このペイドルの町は昔大きな戦があったんだよな? その話を詳しく聞かせてくれるか?」
ハルキにそう言われ、デュアンは大きく深呼吸をして気持ちを整えると静かに語り始めた。
―――四千年以上昔
今よりずっと高度な文明を持った古代帝国時代。
その古代帝国は魔導と呼ばれる不思議な力によって栄えていたそうです。
これは今の魔導科学とは根本的に考え方が違うらしいのですが……
人々は生活に必要な火を起こすにも水を出すにも、全て魔導の力で行っていたといいます。
また、怪我や病気を治すためにも魔導の力が使われていました。
ある時、強大な力を持つ一人の魔法使いが皇帝の座につきました。
彼はそれまでにない新しい魔導技術を創り出し、それを国の為に役立てようとしました。
さらに彼は大陸全体の覇者になろうと考えました。
しかし周りの国々、さらには彼の周りにいた者達さえもそれを許さなかったのだそうです。
彼らは彼の創り出した魔導技術を恐れ、あろうことかそれを独占しようとした。
その結果、彼と彼らとの間に争いが起きました。そしてその争いが大陸全土に拡大していきました。
そしていつしかその戦いは、神に仕えるものと神に抗うものの戦いに変わっていったのだそうです。
激しい戦いの末、この大陸の多くの国は滅び、彼もまた死にました。
そして彼が創り出していた多くの魔導兵器が封印されました。
このペイドルの町ができたのはその少し後。
その皇帝が亡くなる前にこの町を作り、そこに強力な結界を張ったので、その後町は長い間平和だったそうです。
と語った。
デュアンの話を聞きながらハルキは考えていた。
(なるほどな。んで、その魔導兵器を復活させようとしているのがカタデリー教団ってわけだ。だけどなんだ? この違和感は)
ハルキは隣に座っているニッタを見る。
ニッタは真剣な面持ちでデュアンを見つめている。
そして ゆっくりと口を開いた。
「んー、よくわかんないっすけど、カタデリー教団はそのなんとかって言う皇帝の残した魔導兵器を欲しがってるって事っすか?」
「はい。おそらく」
「ふぅん。でもちょっとよくわかんないっすねえ。何千年も前の兵器を掘り出してぱぱっと使えるんっすかねえ?」
そう言ってからニッタはしばらく黙っていた。
ニッタの口から出てきた言葉に、デュアンは驚いた様子で目を大きく見開いた。
そして何かを言おうとして口を開けたまま、しばらく動かなかった。
「ま、とりあえずオルサスがいたって納屋を調べるしかねえだろうな」
「しかし私が確認したところ何もありませんでしたが?」
「ああ、一度ハルキさんに確認してもらった方がいいっすよ。ほら毒食えば鐘がなんとかって言うじゃないっすか」
「ニッタ。だいたい言いたいことはわかるけどそれは全然違うからな」
「ん?」
「ん、じゃねえよ。言いたかったのは毒を食らわば皿までだろうし、この場面で使う言葉じゃねえ」
「あの。もしかすると、蛇の道は?」
「ああ、まあなんでもいいよ。とにかくその納屋にいくぞ」
そう言って三人はオルサスが寝泊まりしていたという納屋に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます