第40話

 地下遺跡領主部屋での出来事のあと、魔法解除やユーシス君にニッタを呼びに行かせたりと慌ただしく過ごした後、氷漬けから解放されたアルネラはひどく落ち込んだ様子だった。


 十六年前、主人が亡くなりその後、ずっと領のため領民のために尽くしてきた。それもこれもすべて息子が領主になるためだった、とずっと泣き続けている。


 アルネラが落ち着いた頃を見計らい、ハルキは声をかけた。


「ちょっと色々聞かせてもらわないとなんだけどな」


「……はい」


「まず、アルネラさん。あんたこの魔道具『聖石』をどうやって手に入れたの?」


「それは、私には何とも。ただ、昔からこの魔道具は我が家に伝わっておりました」


「ほう、代々伝わるねぇ。んじゃあ次の質問。アルネラさん、あんたの息子のデュアンって奴だが、跡継ぎにするために動いてたのになんで失踪しちゃってんの? 目的は何なんだ?」


「そ、それは、申し訳ございません。私は何も覚えていないのです。ただ、デュアンが、デュアンが突然姿を消したのです。本当に何も覚えておりません!」


「ああ、そっか、わかった。んじゃあデュアンが居なくなる前の出来事だ。デュアンに仕えていたファルケを遠ざけたのはなんでだ?」


「ああ! ファルケ。あの黒いローブの呪い子! あれは、あれはデュアンと共にいてはいけない存在なのです!」


「ん? アルネラさん、ちょーっと落ち着こうか。そのファルケは呪いの子?」


「ええ! そうですとも! あの黒いローブの女魔導士ジェニーの子どもなのです! 私の主人をたぶらかし、デュアンを、デュアンまでも陥れようとしたのです!」


「はいはい、落ち着いてね。いいかいアルネラさん。あのね、その女魔導士のジェニー? いないよ」


「え? 何をおっしゃっているのです? ジェニーは以前うちに仕えていた魔導士で、主人が亡くなった際に暇を出したのです」


「うん、それね。あんたが氷漬けになってる間にこの屋敷の皆さんに確認したんだけどね、いないよ、そんな魔導士」


「な、なぜそのような嘘を! まさか、あなたはジェニーの味方なのですか!?」


「いや、だからさ、そもそも、そのジェニーって魔導士はこの世に存在しないの!」


「ど、どういうことでしょうか?」


「ん~、仕方ねえな。おい、ニッタ! 連れて来い」

 と言うとニッタが一旦に出て地下に捕らえられていたファルケを連れてくる。


「この方は?」


「ああ、このお兄ちゃんね、かわいそうに地下に閉じ込められてたの。この人ね、ファルケ君」


「何を言っているのです、ファルケはデュアンに瓜二つで、見た目にはどちらかわからないほどの顔立ちで……」


「そう、もうね、あんたその時から憑りつかれてたの」


 ハルキはニッコリと微笑み、アルネラは驚きで目を大きく見開く。

 ハルキはアルネラに優しく語り掛ける。

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