第38話

 アルネラが両手を広げると、黒いモヤがアルネラの元に集まり始める。


 黒いモヤはアルネラを包み込むとウネウネと動き回りアルネラを別の物に変えていく。


「ちっ!」


 ハルキは魔銃を抜くと黒いモヤに向かい発砲するが魔弾は黒いモヤに吸い込まれ聞いている様子はない。


 グギャアアアアァァァァァ!!


 黒いモヤの動きが徐々に収まるとアルネラだったものが叫ぶ。


 その姿は、全身が緑色をした二足歩行の土竜の姿をし、硬い鱗で身を包み、口が耳まで裂け、牙をむいてよだれをたらしている。


「なんだぁ?! くっそ、こいつはヤバいな」


 そう独り言ちている間にもアルネラが襲いかかってくる。


「うおっとぉ!!」


 ギリギリで避けたハルキだが、その爪により服が破れる。


「おいおい、マジかよ……」


 さらに追撃してくるアルネラの攻撃を避けながら、なんとか反撃の機会を伺うハルキだったが、次第に追い詰められていく。


 そして遂には、アルネラの鋭い鉤爪による一撃を受けて吹き飛ばされてしまった。


 ドガッッ!!!


 壁に叩きつけられたハルキはそのまま崩れ落ちる。


 倒れたハルキは起き上がりながら次の一手を考える。


(このままじゃまずいな…… どうする?)


 そう考えているうちにアルネラはゆっくりと近づいて来る。


 するとその時、突然ハルキの体の周りを白い霧のような物が覆い、アルネラもその異変に気がついたのか攻撃をやめ警戒する。


「な?! これは 」

 ハルキが困惑していると、


「間に合いましたね」

 と声が聞こえた。


 その途端、


「グガァァア!!! ぐぅ、貴様、何者だ!?」

 と叫びをあげながらアルネラが苦しみ始めた。


「私は、そうですねぇ、強いて言えば『正義の味方』でしょうか?」


「ふざけないで! この霧は何?!」


「あら、そんなこと知りたいんですか? それはあなたが知る必要のない事ですよ?」


「な、何を言っている? 」


「あらあら、混乱してますか? まあ、いいでしょう。では名乗らせていただきましょう。私の名前は、そうですねアイスとお呼びください」


「ア、アイスですって?!」


「さあ、では始めましょう。『ダイヤモンドダスト』をここに!」

 その言葉と共に、アルネラを覆っていた霧が氷となって覆う。


 しかしアルネラも


「舐めるなっ!!!」

 と叫びを上げ、口から火炎を吐き出し氷を破壊しようとする。


「無駄ですよ」

 そう言うと、今度はアルネラの周りに氷の壁が出来上がる。


「なっ! なんだと?」

 アルネラは驚愕の声をあげる。


「ふふ、終わりにしましょうか。それでは、ごきげんよう」

 アイスはそう言うと右手を上に上げ、指をパチンと鳴らす。


 アルネラを包んでいた氷の塊が砕け散り、アルネラの体が凍っていく。


「そんな! そんな!! 私は、デュアンのために…… デュアンのために!! くそおおおぉお!!!」

 アルネラの断末魔とともに、世界が元に戻る。


 屋敷に静寂が訪れ、領主部屋にはルスコのミヤモトミヤが所持していた聖石の箱と同じような石でできた箱が転がり、その箱の中には緑色の石が妖しく輝いていた。

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