第34話
「ごめんな、ユーシス君。一応確認するけど奥さんは夜に出て行って、その、な、どこかに別の相手がいるとか、そういう事は?」
「妻はそんな女ではありません! ああ、すみません、大声を。しかし、妻はそんなことをするような人ではないですし、夜間部屋にはいないのですが外に出た形跡もないのです」
「うーん。どういうことだ? ユーシス君、もちろん起きていてどうなったのか確認したんだろ?」
「はい。寝たふりをして確認しました。妻は夜中に起き出して部屋から出ました」
「うん」
「で、私が部屋から出ると、姿はありませんでした」
「え? 姿が消えたんっすか?」
「ニッタ!」
「へーい、すいません」
「で、消えたってのは?」
「跡形もなく、その場から消えた感じです」
「うーん。で、それはユーシス君の奥さんだけではないと?」
「はい。確認しましたが、既に三日前から三人が毎晩姿を消しています」
と、ユーシスは悔しそうに唇を噛む。
どうやらユーシスにとっては大事な部下であり、友人でもあったらしい。
だが、その彼が言うように、もし本当に夜中に出歩くだけで人が消えるならこれは大変な事件である。
ハルキ達は顔を見合わせ、お互いに考え込む。
その時、ふとニッタが思いだしたかのように尋ねる。
「でも戻ってくるんっすよね?」
ユーシスはニッタの方を見ると、全員が屋敷内から忽然と姿を消したあと、何事も無かったかのように戻ってくるのだという。
「んで? 帰ってきた後、そのことは覚えてないんだよな? 他に何か変わった事はないのか?」
するとユーシスは答えづらそうな顔をしながらも 正直に話してくれた。
「わかりません。ただ、汚れたり土が付いたりはしていないのでどこか屋内にはいると思うのですが」
「なるほどな。んじゃあ、ユーシス君。これから一緒に領主館に行ってみっか」
「いや、でもアルネラ様がなんと言うか」
「まあ大丈夫さ。んじゃ、一緒にってのは無しにして、お互い知らない間柄って事にしておこう」
「そうしていただけると助かります」
「ああ、そうだ。もう一ついいかね、ユーシス君」
「はい、私にお答えできることであれば」
「ああ、領主の息子、なんだっけ」
「デュアン様の事でしょうか?」
「そうそう。息子のデュアンはどこにいんの?」
ユーシスはその問いを聞くと一瞬戸惑ったような表情を見せるがすぐに笑顔を作り答える。
「申し訳ございません。私にはお答え致しかねます。デュアン様は半年ほど前より、その、なんと言いますか」
ハルキにはその作り笑いが無理をしているように見えた。
そしてユーシスは少し困ったような口調で息子は現在行方不明になっているのだと答えた。
その言葉を聞いたハルキはニッタの方をチラリと見ると彼は肩をすくめるだけだった。
そしてハルキはユーシスに向かってそのあたりを詳しく教えてくれと頼むとユーシスは苦笑しながら分かりましたと言い、ハルキに事の詳細を伝えた。
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