国家情報保安局
第30話
領主館に出向いた日の夜、ヴィルジーニアの宿屋の屋根に影が二つ。
影は迷うことなく部屋の窓を静かに開け室内に侵入する。
侵入した二つの影は音もなくベッドに近づくとニッタの身体を拘束する。
そして部屋を出た二人は隣の部屋に忍び込み寝静まったハルキを同じように拘束しようと部屋に侵入する。
二人とも黒装束に身を包んでいるが、一人は顔を隠すように覆面をしており、もう一人は女性だった。
「ほんと手間のかかる連中ね」
女がいうと黒装束の覆面の男が頷く。
その瞬間クローゼットが開き魔銃を抜いたハルキが突入する。
「おい、お前ら! なんで毎回毎回俺たちの邪魔をするんだよ。いい加減にしろよ」
そう言うと腕を拘束されたままのニッタも室内に入ってくる。
「なんなんすかもお! ってあれ? イッコさん? って事はこっちの黒装束は、ホリさん!」
「うるさいよ! お前が入ってくるとほんと締まらないよ」
ハルキは銃を降ろすと
「んで? 今回はなんなんだ?」
と尋ねる。
「んもう。ほんと嫌になるわね。国家情報保安局の仕事に決まっているでしょう。ペイドルに来てみたらすでにあなたたちが調査を進めてるって状況だったのですよ、私も上からの命令ですもの、ごめんね、許して」
「ホリさん、もう覆面とりなよ。いつまでつけてんだよ」
「……」
無言で覆面をとるホリ。
「さて、と。なんで拘束までされなきゃいけねえのか聞かせてもらおうか。んで、こないだのミイラ騒ぎみたいに急に火柱出されたりしたらたまったもんじゃねえからな」
ハルキがイッコを睨みつける。
「あれは仕方なかったのですよ、こちらにもいろいろと事情があるのですから。そんな事より今回の話ですね」
「おい、俺の質問を無視するな」
「はいはい。わかりました。で、今回の事件なのですけど」
「おい!」
「で、今回の事件なのですけど、イレイサーへの依頼はここペイドルでの遺物の有無、もし存在してなおかつ憑き者が「ある」場合にはイレイスを。「ない」物ならこっちで対処する、って事だったのです。が、上から捜査を止められてしまいまして」
「わかったよ、もう聞かねえよ。ん? 止められた?」
「そうなのです、だから今回、調査を進められないのです。ですので悪いのですがしばらく時間を頂けないでしょうか?」
「時間って言ったってなあ。待てば再捜査できるようになんのか?」
「おそらくないですね」
「ないのかよ」
「ええ、で、言っても聞いてもらえないでしょうから仕方なく拘束して連れて帰ろうかと……」
「めちゃくちゃだな、おい。そもそもイレイサーの仕事は依頼を受けたら誰にも止められないはずだぞ。判断はすべてイレイサーに任されるはずだろ? なのになんで中止の命令がだせ…… ああ、そーとー上の存在からの圧力か。ってことはやっぱ絡んでんだな、ファンドリール開発」
「そんな目で見ないでくださいよ。私たちも命令で動いてるのです、わかっていただけますよね」
そう言って眼鏡の縁を持ち上げながらウインクをした。
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