第7話

 アキは自らの無数の棘で白いドレスの女の腕を串刺しにし、ほぼ同時に腹に蹴りを入れ、白いドレスの女を吹き飛ばし、さらに黒い針を放ち白いドレスの女を突き刺していく。


 そして、最後の棘が刺さった瞬間、白いドレスの女が白い光を無数に放ち始め消滅していった。


 ――――――


「しっかしアキさんのイレイスっていつ見てもえげつないっすねえ」


「ふん! 失礼だよ。この程度造作もないさ。私にはハルキのイレイスの方がよっぽどえげつないと思うがな。それより、ほら、これを見な!」


 アキが指差した先には、ユウジから奪った『ギリメカラ』と共にペンチのような道具が一つ落ちていた。


 ハルキはその道具を拾い上げる。


「おぉ? なんだこりゃ?」


「それは、玉箸と呼ばれる道具じゃな」


「おぉわ!? びっくりしたぁ! なんだよ、爺さんかよ」


「ほっほっほ、すまんのう。お前さんたち、それがなんなのか知りたいんじゃろう?」


「ああ、知ってんのか? 爺さん」


「知っとるも何も、そりゃあ刀という武器を作る時の鋼を固定するための道具じゃな。まあ、わしも初めて実物を見たがな」


「へぇ、これがねぇ」

 ハルキはまじまじとその道具を眺める。


「その刀って言うのはどんな武器なんすか?」


「片刃の刃物でな、大小さまざまな物がある。今も東方では作られておるらしいが、この辺りではなかなか手に入らんだろうな」


「なんでそんなもんがこの街に? この辺にはない東方の武器を作る道具がこの街に流れ着いて、んで、よりによってそれに憑き者ってのは偶然じゃねえよなあ」


「ハルキ。それはあんたが首を突っ込むことじゃないよ。詮索はそこまでにしときな」

 アキが鋭い眼差しでハルキを睨みつける。


「へいへい。アキ様は帝国国防省刑事捜査機関お抱えの優等生様だからな。俺たちみたいな野良の憑き者退治してるイレイサーとは違いますわなぁ」


「ふん! その野良に助けてもらった私は非常に滑稽ではあるがな」


「まあまあ、二人とも。イレイスできたんですから、もういいじゃないっすか。で、この玉箸? アキさんが持って行くんですよね?」


「ああ、そうさせてもらうよ。こいつは帝国国防省刑事捜査機関に提出しなければならないだろうからねえ。ま、そうじゃなくても私はこいつを持ち込んだ奴を必ず見つけ出して串刺しにしてやらなければ気が済まないからねえ」


「いや怖えよ。ま、こっちは気が済んだしな。あとはアキの好きにすりゃあいいんじゃねえか?」


「すまんな、ハルキ。世話になった。これでユウジの仇も討てた。改めて礼を言う」


 アキは落ちていた『ギリメカラ』を大事そうに胸に抱くと


「ユウジ、仇はとったぞ」

とつぶやいた。


 アキのその表情は少し和らいで見えた。





 ハルキとニッタはアキの和らいだ顔を見て同時に思う。





 (ユウジって刺されたけど死んでないよね?)

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