第5話

「ハルキ」


 ひどく疲れた様子で入室したツノダが口を開く。

 声も掠れていて力がない。


「なんなんすか、ツノダさん。驚かさないでくださいよ。んで? どこ行ってたんすか?」


「ハルキ、お前。お前、あれどうすんだよ、あの短……」

「あー、それはまあ、また後でね。んで、どこ行ってたんすか?」


「あ? ああ。国家情報保安局、参事官に呼ばれて。お前のせいだよ。あれを俺が手に入れたことにして報告したら局に呼ばれた」


「それあんたのせいだろうがっ!」


「そうか? ま、そうかも知んない。でな、参事官がどうなってんだあってなって、ハルキがって、お前がって言ったけど、俺があ、みたいになって、んで、結局俺が手に入れたことになってお前らは公園破壊して、ユウジは刺されるし、アキは一人で怒ってトクゾウのとこに行くしでもうぐちゃぐちゃだよ」


「あんたがぐちゃぐちゃだよ! もうあんた帰って寝たほうがいいよ。んで? アキは一人であのジジイのとこに行ったんだな?」


「まあ、はい。たぶん」


「おい、ニッタ。俺らもジジイんとこ行くぞ、急げ!」


 そう言うとハルキは駆け出し、ニッタも後に続く。


「おい! ハルキ! まだ話は終わって…… って、もういないよ」

 ツノダは頭を抱えて机にうずくまる。


 ――――――


「ハルキさん、ハルキさんって!」


「んなんだよ、うるせえなあ」


「やっぱヤバかったんかね?」


「ん?」


「あれ。やっぱヤバいかなあって思ってたんすよ、プロデューサーに言われた時に思ったんすよ」


「いや、まあ、その、あれはまあ仕方なかったっていうかな。成り行きっていうか。まああの短剣……」


「そうっすよねえ、やっぱダメですよねえ、公園破壊しちゃうとか」


「ん? 公園?」


「そうっすよ。だから怒られたんでしょ? プロデューサー」


「そ、そうだな。後で謝っておこう」


「それがいいっすよ、ハルキさん、いっつも無茶なことするんっすから」


 そんな会話をしながらトクゾウの店にたどり着くと店内から大声が響いているのが聞こえる。


 ハルキとニッタは店内に急ぎ店内に入ると


「やっと見つけたよ、覚悟しな!」

 アキが白いドレスの金髪の女性と対峙している。


「間に合ったか。おい、アキ、お前一人じゃ無理だ、退け!」

 ハルキが言うと


「ハルキと坊やかい。退けだと? バカ言ってんじゃないよ、こっちはユウジをやられてんだ、退けないねえ。あんた達こそ退きな!」

 そう言うとアキの黒髪と黒いドレスから無数の黒い針が伸び、身体が刺々になっていく。


「落ち着けって! って無理かあ。ニッタ! 隠れてろよ!」

「はーいって、アキさん、怖いっすよー!」

 店の外に避難するニッタをアキが睨みつける。


「ハルキもどっかに隠れときな! こいつは絶対に私がイレイスする!」


 そういった途端、全身の棘が放たれ白いドレスの女に無数の棘が突き刺さる。

 しかし白いドレスの女は痛みを感じない様子でアキを睨みつけると


 キィィィ!


 と叫びアキに襲いかかる。


 クッ?!


 アキは後ろに飛びかわそうとするが白いドレスの女の両手が湾曲し両手でアキを挟み込もうとする。


「アキッ!」


 そう言うと同時にハルキは魔銃の引き金を引く。


 キィィィン!


 白いドレスの女の湾曲した右腕に当たり反動で回転しながら倒れ込む。

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