第3話

「ハルキさん、ハルキさんっ!! 大変っす! こないだオレらが行ったすぐ後にトクゾウさんの店に強盗が入ったんですって!!」


「何?! んで? 無事か?!」

「ええ、命には別状はないらしいんっすけど、まだ意識が……」


「ばっか、違うよ、俺の銃だよ」


「え?」


「俺の銃は無事かって聞いてんの!」

「ハルキさん、時々ほんとにひどいっすねえ」


「あのジジイ、殺しても死なないだろ? そんな事より俺の銃は?」


「ええーっとぉ……」


「え?! マジ?! 無くなっちゃったの?」

 ニッタは静かに頷く。


「許さねえ、俺の『オーシャン・スティール』をおおおおおおおお!! 誰だ、俺の銃を持ってった奴はあああああああ!」

 ハルキは顔を真っ赤にして怒りに震えている。


 その時、後ろの扉が開き声をかけられた。

 包帯姿で杖をついたトクゾウが立っていたのだ。

 二人が慌てて姿勢を正すと、トクゾウは二人に向かって深々と礼をする。


「あ、どうも」

 ニッタが普通に頭を下げる。


「どうも、じゃねえよ、おいジジイ!」


「ああ、すまんかった」

 そう言って懐から『オーシャン・スティール』を取り出した。


「なんとかこいつは守ったんじゃがな」


「いや、爺さん、何やってんだ?! こんなとこに来ちゃダメだろ、怪我してんだろ? 寝てろよ」


「殺しても死なんのじゃなかったかのぉ」


「っ! そりゃあ言葉のあやってやつだろうが。あ、ほんとごめんなさい」

 ハルキは素直に謝る。


「はっはっは。いや、ええんじゃ。これを渡しに来ただけじゃからな。ほれ」


 まだメンテナンスは済んでおらんが、と言ってトクゾウはハルキに銃を手渡し踵を返す。


「おい、爺さん。やったのは誰なんだ?」

「さて、知らんのう」


「知らねえのかよ、なんか特徴とかさ!」


「ふん、わしを襲ったのは白いドレス、金髪の女じゃ。まあ今まで見たこともない女じゃった。客かと思うて対応しようとしたらいきなりな。まあいい、お前さんも気をつけろよ」


 と、ニッタに向けて言う。


「ん? オレっすか? わかったっす!」


 トクゾウはハルキに銃を渡すと、預けた銃も使って構わん、といって事務所を出ていった。


「白いドレスの金髪女っすかあ。ん? あれ? それどっかで聞かなかったっすか?」


 ニッタは顎に手を当てながら首を傾げるが思い出せないようで諦める。


 しかしハルキの表情は一変していた。

 先ほどまでの怒っていた顔ではなく、何かに気づいたような顔だった。


(まさか……)


「おい、ニッタ」

「はい」


「これな、俺らが解決するぞ」

「はいっす! って、どれっすか?」


「ユウジがやられた事件だよ!」

「あー、あ、あれか、白いドレスの金髪女。え? あれってアキさんが殺し屋の目をして追いかけてる事件じゃ?」


「ああ、そうだな」

「いや、まずいっすよお、それを横取りしたらオレらがアキさんに殺されるっすよ?」


「バカ言うなよ、俺らだってあのジジイやられてんだ、文句は言わせないよ」

「いやあ、いやいやあ、どうっすかねえ」


「それにな、このままだとユウジの『ギリメカラ』を取り戻せないまま終わるぞ」

「え?」


 ハルキはそう言って難しい顔をする。

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