第2話
街の中心部から少し外れたところに位置しているこの店は、めったに客は来ないのだが、知る人ぞ知るトクゾウと言う名工が経営する武器屋である。
トクゾウはその腕を買われて国からの依頼を受けることもあるのだが、自分が気に入った客にしか武器を作らないため、客足が少ないにもかかわらず経営できている。
そんないつもは静かなこの店に大声が響いている。
「だーかーらあ、銃のメンテをしてくれって言ってんだろ。なんで客のいう事を聞かねえんだよ、爺さん」
「ふんっ! なんでわしが銃なんぞメンテナンスせんといかんのだ、若造」
「あのねえ、あんたは武器屋でこっちは客なの。俺だけじゃないんだよ。ここに来る人のほとんどが爺さんに武器を作ってもらったりメンテしてもらいたいと思ってくるんだよ?」
「知らん!」
「おい、ニッタ。ダメだこの爺さん、もういいよ、帰ろう」
「そんなこと言わないでくださいよー。ハルキさんの魔銃って特殊だからメンテしてくれるところがなかなかないんですって」
それを聞いた途端、トクゾウの目が光る。
「魔銃だと?!」
「ん? ああ。だから言ってるじゃねえか。魔銃のメンテナンスをって」
「お前さん、銃の、としか言っておらんかったわ。どれ、見せてみい、ほれ、早う」
「ああ、ちょっと待ってくれよ。ってさっきと全然違うじゃねえかよ」
そう言いながらハルキはバッグの中から魔銃を取り出してカウンターに置く。
「ほう、これは珍しい。『オーシャン・スティール』か。しかも変わった形をしておるのう。銃身が長いわりにグリップが短い。それにこの刻印は、ああ、魔力増幅器か。ふむ、確かに面白い構造をしておるが。ふん、まあいい。それで、この魔銃をメンテナンスするのか?」
「ああ。んで、できればその間の替えがあると嬉しいんだけど」
「メンテに七日だ。ほれ、これを持っていけ」
そう言うとカウンターの下から一丁の拳銃を取り出す。
「え? これ使っていいの? かなり高そうだけど」
「構わん。お前さんの魔銃ほどじゃあないがそいつもなかなかじゃろう?」
「ラッキー、助かるー。そんじゃあまた来させてもらうわ」
「ね、良かったでしょ? プロデューサーから聞いたんっすよ、ここの爺さんすげえんだぞおって」
「ん? そういや今日、事務所にいなかったな、ツノダさん」
「ああ、なんか上に呼ばれてるって言ってたっす」
「ふーん」
「ふーん、ってハルキさん。あれ、こないだの公園吹き飛ばしたやつ、あれを怒られてんだと思いますよぉ」
「知らないよ。それより早く行こうぜ」
「ちょ、ハルキさん置いてかないでくださいよう」
二人はそのまま店を出て行った。
トクゾウは、ハルキの持っていた魔銃を手に取る。
(変わった形の魔銃じゃのう。しかもこいつは)
トクゾウが魔銃を見ながら思考を巡らせていると、店のドアが開く音がした。
トクゾウが銃から目を離し入口を見ると、そこには白いドレスを着た金髪の女性が立っていた。
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