イレイサー:File05~07_帝都の聖蹟:指令があれば「憑きモノ」を「ないモノ」に消します。
UD
1章 File05_見知らぬ憑き者
第1話
オーフィア帝国歴1236(聖王歴2023)年 一月
「またね。これで何件目? ユウジ」
そう声をかけたのはイレイサーのアキ。黒髪に真っ赤な口紅、胸元の開いた黒いシャツにロングスカート姿をしている。
「これで五件目ですね、アキさん」
「やっぱり何かに挟まれての圧死?」
「はい」
「人を挟んで殺す道具って思い当たる?」
「いえ」
「ユウジ」
「はい」
「あんたホントに可愛げがないわねえ、かわいい顔してるのに」
「私は私のやるべきことを優先させたいだけです」
そう言って眼鏡のふちを指先で持ち上げるユウジと呼ばれた男性はアキのバディで、年齢は二十代後半白いシャツ、グレーのスーツをきっちりと着こなしている。
「すでに準備はできています」
ユウジはそう言って追跡装置を起動し痕跡を追うがうまくいかない。
「うーん、やっぱり。今回の『遺物』、なんかおかしいのよねえ」
アキが残念そうに言うと
「とおっしゃいますと?」
「わかんないわよ、そんなこと。ただ、普通じゃない感じがするのよ。まあ後でプロデューサーのツノダさんに報告しといて」
この世界に存在する過去の『遺物』(魔道具、武器や防具)に稀に「ある」者が憑りついてることがある。
イレイサーの仕事は、この憑りついている者の存在を消して、「憑りつかれている遺物」を「通常の遺物」に戻すことである。
アキとユウジのバディはイレイサーの中でも帝国国防省刑事捜査機関への協力を求められているバディで、遺物関連の事件だけではなく通常の事件にも協力している。
追跡装置で痕跡を辿るが五件とも同じ場所で痕跡が途絶えてしまう。
「やっぱりここで痕跡が途絶えるわね」
「そうですね。この付近に何かあるのでしょうか?」
二人がその場所へ近づこうとした時、背後から何者かに襲われる。
バシュッ!!
ドンッ!!
ユウジは一瞬にしてその場から離れ態勢を整える。
キィン……
キンッキンッ!!
カンッカンカカカッ!!!
剣を打ち合う金属音が鳴り響く。
襲撃者は三人で白いドレスの女がアキに、二人がユウジと対峙している。
一対二の状況でもユウジは全く動じることなく、冷静に対応する。
(くっ、速いですね。しかしこれなら、なんとかなる)
ユウジは襲ってきた相手に意識を集中させる。
一方、アキは突然の襲撃にも全く動揺せず紅い口元を少し上げ、むしろこの状況を待っていたようだった。
襲撃してきた相手の二人は黒いローブに身を包みフードを被っているため性別まではわからないが、一人はその手に持つ槍からは炎が噴き出している。
黒いローブの二人はアキに向かって襲いかかる。
最後の一人は、白いローブ姿の女性で、フードの間から金色の長い髪を後ろで束ねているのが見える。
ユウジはその女性の容姿を見て驚く。
(あれはまさか!? しかしなぜこんなところに?)
そう思った瞬間、襲撃者の攻撃をかわしきれず腹部を刺される。
ドクンッ!
体に異変を感じると、ユウジはそのまま前のめりに倒れ込む。
それを見たアキは一瞬表情を変えたが、息を一つ吸うと自分の腰に下げていた剣を抜き、襲いかかってくる二人を迎え撃つ。
キィィン!
ガァン!
キンッキンッ!
二人の攻撃を片手剣で受け流し、アキは反撃に転じる。
アキの攻撃に対して二人はそれぞれ防御に徹している。二人はアキの実力を推し量ると、これ以上の戦闘は不必要と判断し、その場を離れようとする。
「逃がすはずないでしょう」
そう言うとアキの黒髪が影のように伸び始め男二人を拘束するが、白いローブの女はいつの間にか姿が見えなくなっていた。
「ユウジ! ユウジ―――!!」
ユウジに駆け寄るアキの悲痛な声だけが響き渡る。
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お知らせ
こちらがイレイサー短編一作目になります。
連作になりますので、どこから読んでも大丈夫ですが、00から読まれた方がよりお楽しみいただけるかもです。
イレイサー:File00_動くミイラの謎
https://kakuyomu.jp/works/16817330649310746393
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