第23話
その夜、ハルキとニッタは宿屋ですり合わせを行う。
「なんだと? 黒いローブの男だ?!」
「そうなんすよ、いかにもでしょう。なんなんすかねえ? 遺体を盗むって」
「だなあ。しっかしこの符号は何だ? ファンドリールの誘致決定、新規の魔道具、領主の息子の失踪、遺体消失、黒いローブの商人。どんどん謎が増えていくじゃねえか」
と頭をかく。
「ハルキさん。二番目に行った母親を亡くした息子さん、その黒いフードの男って身長はそこそこ高くて体格も良かったんで男性じゃないかって言ってたんっすけど」
「まあ男でも女でもどっちでもいいけどよ。それが?」
「まあ、そりゃあどっちでもいいんすけど、その息子さん、黒いローブの商人って言ったんですよ。ローブに身を包んで顔も隠してるのになんで商人って思ったんすかね?」
ととぼけた顔で言う。
「お前ね、それを聞いて来いよ、なんでそこを聞いてねえんだよ」
「いやあ、あの時は全然気にならなかったんすよ。あ、あと最初の娘さん、流行り病の。亡くなって次の日の朝までご両親がベッドの側にいたんすよ。葬儀屋が来てバタバタしてるわずかな間にいなくなったって」
「ああ、そう言ってたな」
「どうやって遺体を運んだんすかね? 遺体を運ぶのって結構大変だと思うんっすよ」
「そうだな。遺体を運ぶ何らかの手段が存在するんだろうな。いや待てよ、そもそも運んでんのか?」
「魔道具かなんかあるんすかねえ」
「魔導具か。おい、ニッタ。ファンドリールの魔道具だけどな、道具屋の親父、農機具とか言ってたが、まだ高額で買える家は限られてるとかなんとか言ってたな、なんか関係あるのかもしれねえな」
と言って難しい顔をしてしばらく考え込む。
「そう言えばな、ニッタ。覚えてるか? あの黒い骸骨が現れた時の事」
「ありゃあ恐ろしかったっすねえ」
「あの時の古紙な」
「あの封筒に入ってた紙っすか」
「ああ、あれな、どうやら八百年以上前の物らしいんだ」
「そうなんすか?」
「ああ。んでな、あの古紙に書かれた内容、あれな、古代帝国の軍事研究に関係する物だったみたいだぞ」
「うへえ、なんなんすか、それ?」
「ああ、まだわかんないけどな。ま、これでファンドリールのキョーカ・クチガがその遺物の事を調べてるとすると、だ。ペイドルの町も何らかの関係があるかもな。国家情報保安局が俺らに依頼してきたってことは、この町は遺物と何か関りがあるのかもしれねえってことかもな。だがまあまだ情報が少なすぎてわかんねえ。お前、どう思うよ?」
「ハルキさんがわかんないのに俺がわかるわけないっすよ」
「なんだよ、お前も少し考えろよ」
「んー? ハルキさんが聞いた魔導具って農機具なんすよね?」
「ああ、道具屋の親父はそう言ってたな。結構デカかったぞ」
「じゃああの家の外に置いてあったやつっすかねえ? あれだけの機構を動かそうとあ思ったら結構な魔石がいるんじゃないっすかねえ?」
「まあそうだろうなあ。なんだか知らないけどファンドリールが新しい魔力消費が抑えられる機構で動いてんだとさ」
「そうなんすねえ、今度使わせてもらいたいっすね」
「まあよくわかんないけど、とりあえず俺は領主代行に会いに行くわ。お前はそのまま遺体消失の方を追ってくれ。特に黒いローブの商人ってのが気になる、そいつを追ってくれ」
こうして二人は再び捜査を開始する事を決める。
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