第17話

 車に乗り込んでしばらく経った頃、突然急ブレーキをかけて停車する。


 ニッタはハンドルに頭を打ち付けたらしく額をさすりながら文句を言う。


「なんなんすかもおおおおお!」


 ハルキはドアを開け外に出て様子を伺う。


 ニッタもそれに続くように外に出る。ハルキが運転席から降りてきたニッタに声をかける。


「おい、何があった?」

「いや、急に前を紫色の何かが横切ったんすよ!」


 ニッタはキョロキョロしながらハルキに報告するが特に何も見つからない。


 すると後ろから一台の車が近づいて来てハルキ達の車の横に停車する。


 ハルキとニッタがその車に近づこうとすると、車の後部座席の窓が開きそこからキョーカが顔を見せる。


「あら、お二人ともどうしたんです? そんなに汚れて」


「よく言うぜ、あんたよく俺らの前に顔を出せたな」


「あら、どうして? 先ほどあなたに渡すものは渡したわよ」


「おい、本気で言ってんのか? あんなものを渡しておいてこれで終わりって事にはならないだろ?」


「あら、渡せと言われたから渡しましたのに。私は素直にあなた方と仲良くしたいと思っていますのよ」


「ふん、何言ってやがる。お前の言うことなんか信用できるか」


「あら、ひどい。どう証明すればいいのかしら?」


「まず降りてきて本物の書類を、って、まさかありゃあ本物か? あー、まあもっとも今さら何言ったところで遅いだろうけどな」

 ハルキはキョーカに毒づくが


「ね、私は本物の書類をあなたに渡したわ。文句があるならそれこそ上の許可を取ってからにしてくださいね」


「てめえ……」


「あ、そうそう。せっかく仲良くはなったんですけど、次からはアポ無しなんて無粋な事はやめてくださいね。これでも私、結構忙しいの。ま、もう会うこともないでしょうけど。なかなか楽しませてもらったわ、イレイサーさん」


 と言うと魔導車のスモークガラスを上げ、車が走り去る。


 その車を見送りながら


「くっそお。いつかきっちり落とし前つけてやるからな。覚えてやがれ」

 と毒づくハルキだった。


「なんなんっすか? あれ、さっきの紫色のって、やっぱりキョーカさんがやったんすかね?」


「ったり前だろ! でなきゃこのタイミングで出てくるかよ。しっかし腹立つなあ。あー腹立つ!」


「まあまあ。しっかし目の前横切ったの何だったんすかねえ?」


「知らねえよ」


 そう言うとハルキは不機嫌に車に乗り込むと、静かに何かを考えている様子だった。

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