第15話

「すみません、失礼ですがキョーカ・クチガさんでいらっしゃいますか?」


「ええ、そうですけど。あなたは?」


「申し訳ありません。あなたのそのバッグの中身を回収させていただきたいのですが」


「誰の差し金?」

 顔色を一瞬替えたキョーカは平静を装いながら言う。


「うーん、上?」


「まさか国家に? あなた達、国家情報保安局?」


「いやあ、まあその辺はね、内緒。で、いただけますかね、中身?」


 ハルキは右手を前に差し出しキョーカを見つめる。キョーカもハルキをじっと見つめるが


「……わかりました。私の負けですね」


 そう言ってテーブルの上にバッグを置き、中から何かの入った封筒を取り出しハルキに渡す。


「はい、確かに。ではこちらで手続きを行いますのでご確認ください」


「ちょっと待ちなさい。あんた達一体何者なの?」


「申し訳ありませんがそれはお答えできません」


「そう。いいわ。私だって自分の身が一番かわいいもの。それではよろしくお願いしますわ」


「はい、確かに承りました」


 そう言ってニッタに目配せをし


「さあ、帰るぞ」

 といって店を出る。


 残されたキョーカは少し不安げな表情を浮かべていたが、すぐに元の冷静な表情を取り繕うと席に向かう。


 ――――――


 レストランを出て魔導車に乗ったハルキとニッタだが、運転をしながら我慢できずニッタが尋ねる。


「ハルキさん、今のなんだったんすか?」


「ん? だから言っただろ? 取り立てだよ」


「いや、それはまあそうなんでしょうけど。それは一体何なんなんっすか?」


「知らないほうがいい物も世の中にはあるんだよ、ニッタ君」


 と言って目をつむり、後部座席で眠りはじめ、それを見ていたニッタはため息をつく。



 しばらく車を走らせていると


「おい、ちょっとそこの公園に車を停めろ」

 とハルキが言うとニッタは慌てて車を停める。


「ちくしょうキョーカめ、だましやがったな。やけに簡単に引き下がったと思ったんだよ」


「どうしたんすか? ハルキさん」


「どうもこうもねえよ、だまされたんだよ」


 と言うと内ポケットから先ほどの封筒を取り出し車窓から地面に放り投げる。すると封筒の中から黒いモヤが立ち昇り周囲からも黒いモヤが集まってくる。


 ハルキが車から出ると魔銃を取り出し封筒に向かって放つと、白い光が黒いモヤに当たり、爆発する。


 しかし、周囲のモヤはハルキ達の乗っていた車を囲むように封筒に集まり続ける。


「ちくしょう、またかよ」

 とつぶやくとニッタに少し離れるよう指示する。


 封筒に集まった黒いモヤが骸骨のような姿に変わっていき、目を赤く光らせる。


「んだよ! あー、めんどくせえ!!」


 ハルキが叫びながら銃を放つと青い光の塊が現れ骸骨の化け物にぶつかるが、その攻撃もあまり効いていないようで、ハルキ達に襲いかかってくる。


 ギギギギ!


 ギャアア!!


「くっそ、おいニッタ! 撃てるか?!」


「無理ですって! あんなもん撃っても効かないっすよぉ!」


 と言いながらもニッタはライフルを引き抜き骸骨に向けて撃ち始めるが効果は薄いようだ。

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