3章 File07_陸の孤島の遺体消失

ファンドリール

第14話

 ――― 一か月後


 帝都グランドホテル最上階のレストランは帝都でも指折りの高級レストランで、有名シェフが高級な食材をふんだんに使い、手間隙かけて作った料理を提供している。


 ここは帝国皇帝もお忍びで訪れるというレストランで、警備は厳重を極め、店に入るには入念なチェックを受ける。


 厳重なボディチェックを受け、身体検査を行い、顔写真付きの身分証明書を提示してようやく入店を許されるのだ。


「いやあ、こういう感じなんっすねえ」


 その店内で席に座り周りをきょろきょろと見ながらニッタが言う。


「ん?」


「いや高級ホテルのレストランってこういう感じなんすねえ」


「お前どういうの想像してたの? ここはいつもこんな感じだよ」


「いや、ハルキさんが連れて行ってやるって言うから絶対しょっぼい店なんだろうなあって思ってたんすよ」


「お前ほんとに失礼な奴だな。言ったろ? 高級ホテルで飯食わせてやるって」


「だってハルキさんがこんな高級なとこって似合わないっすよ?」


「あのなあ、ニッタ。俺だってたまにはこういう所で一人静かに食事をとるってこともあるんだよ? 何が似合わないだ、いい加減にしろよ」


「でもなんで今日は連れて来てくれたんすか? 絶対なんかあるでしょ? またオレを騙くらかそうと思ってるでしょ?」


「あのね、俺がお前を騙くらかして何の得があるんだよ。まあ、おいおい分るよ」


 高級ホテルのレストランで食事をとりながら二人が話している。


「しっかしまだなんすかねえ?」


「ん? なにが?」


「ああ、ミヤモトミヤ先生の件っすよ。まだおりないんっすか?」


「ああ、そっちか。まだみてえだな」


「そっちかってどっちっすか? ああ、あれ、教会への許可、プロデューサーが任せとけ! って言ってましたけどねえ」


「あのおっさんにそんな力があるわけないと思ってたけどやっぱりなかったんだな」


 そう言って笑うハルキは青いスーツにスカーフ、ニッタはいつもよりオシャレをして茶色いスーツに身を包んでいる。


「しかしお前、オシャレして来いって言ったのになんだよ、こないだのミイラの時と同じスーツじゃねえか」


「いいじゃないっすか! いっつもハルキさんに投げ飛ばされてボロボロになっちゃって、これも新調したんすからね! しかもそれを言うならハルキさんだっていつもと同じじゃないっすか!」


「なんでちょっとキレてんだよ。俺はいつもオシャレなんだよ。お、あれだな」


 ハルキが手に持ったフォークでレストランの入口を指す。


「え? 今入ってきたのって、あれ? キョーカさんじゃないすか?!」


 キョーカと呼ばれた女性は、黒い長髪で赤いドレスの細身で美しい女性で、ちょうど店内に入るところだった。


「なんだ、お前知ってんの?」


「超有名人じゃないっすか。ファンドリール開発の社長でしょ? 知ってますよ。で、キョーカさんがどうしたんすか?」


「ああ、実はな。そのファンドリールは結構な借金があるらしくてな」


「へえ、そうなんすか? あんなにマスコミにも取り上げられてすごい勢いなのに」


「ああ、そうなんだよ。んでな、あのキョーカって女、手を出しちゃいけないとこに手を出しちゃったんだわ」


「え? あれ? もしかして、これって仕事っすか?」


「あったりまえだろ、じゃなきゃお前をこんなとこに連れて来ねえよ」


「ひどいっす! 本当にひどいっす!! ほら、やっぱり騙くらかしてんじゃないっすか!」


「うるせえなあ。おい、ニッタ。ボケっとすんな、行くぞ」


「ええ? まだ食べ終わってないじゃないっすか、せめてメインを食べ終わるまで、って。はぁ。はーい……」


 二人が立ち上がりキョーカに近づいていくと黒服の男たちが遮るがハルキは気にせずキョーカに声をかける。

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