小2少女の恋

滝川 海老郎

(本文)

 俺の家のはす向かいには小学二年生の瑠々るるちゃんが住んでいる。

 俺は中学一年になったばかりで小学生とは違うちょっとしたお兄さんだった。

 一昨年、幼稚園だった時、お母さんの調子が悪くて俺がルルちゃんのお世話をしたことが何回かあった。

 家庭用ゲーム機で簡単なゲームなどをやって一緒に過ごしたりしていた。

 それからちょくちょく遊びに来る。

 お母さんがちょっとした買い物に行くときなど、俺んちに預けることがあるのだ。


「ルルちゃん、じゃあね。またね」

「うん、カイトお兄ちゃん、じゃあね」


 そんなルルちゃんと遊んだある日の帰り、目を潤ませて俺に抱き着いてきた。


「あのねルル、お兄ちゃんのこと大好き!」

「お、おう。俺もルルちゃんのこと大好きだよ」

「違うの、ちがうっ!! そうじゃなくて真剣なの~~」

「そ、そうか」

「カイトお兄ちゃん、ルルが十八歳になったら結婚してください」


 ルルちゃんが俺に抱き着いてくる。

 まあ、そういう歳頃なのだろう。

 かわいい盛りで俺も気分は悪くはない。


「わかった、わかったから」

「本当だよ? 約束だからねっ」

「おお」

「やった~~お兄ちゃんはもうルルのものだもん」



  ◇


 それから五年経過。

 ルルちゃんは中学一年生になった。


「カイトお兄ちゃん、見てみて」

「おお、ルルか。大きくなったな」

「でしょ。もうルルも大人なんだからねっ」

「ははは」


 背もだいぶ伸びてもう幼女ではない。

 立派な女の子になっていた。


 ここ数年はほとんど見かけることもなく、俺は高校三年生。

 来年になれば大学生になる。


「しっかり見てよ。ルルの成長。セーラー服だよ、セーラー服」

「ああ、かわいいぞ」

「やったぁ」


 そういってよろこぶルルちゃんは確かにめちゃんこかわいい。

 いつの間にかぷにぷにではなくなったが絶世の美少女に大変身していた。


「見てみて今日は特別、遠足だよ」


 そういって今度はジャージ姿を見せてくれた。

 胸が。ほんの少し膨らみ始めている。

 あのルルも女の子になったのだ。


「じゃーん、夏休みだから特別にワンピース」


 そういうルルちゃんは純白の薄いワンピースだった。

 女の子のシルエットが丸わかりで、なるほど、少女特有の美しさがある。


 季節季節、ルルちゃんは俺にいろいろな服装を家の前で見せてくれる。

 さすがに家の前で水着だったときはどうかと思ったが。


 そうして俺も大学に進学して忙しくしていた。

 あっという間に四年間が過ぎ、俺も新社会人になった。


 ルルちゃんは高校三年生になっていた。


 有名私立女子高のセーラー服を着たルルちゃんが、家の前で俺を待っていた。


「カイトお兄ちゃんっ……」

「おお、ルル。こんな朝早くにどうした」


 俺は仕事が朝からあり高校生より早い。

 だから一緒になることはほとんどなかった。

 それが今日はルルちゃんが家の前で待っていたのだ。


「あのね、私、今日誕生日。十八歳だよ」

「そっか、おめでとう!」

「ありがとう。それでね、結婚っ、約束したもん」

「お、おう」


 俺も覚えていた。

 確かにルルちゃんと結婚するって。

 でもそれは小学二年生の時の約束で。


「あれって小学二年生だろ。本気なのか?」

「うん。いつも私、ずっと、ずっと待ってたよ。お兄ちゃんのこともいっぱい調べて知ってる」

「そう、なのか……」

「商社なんでしょ。外国とも取引があって、国内勤務だけど、将来は海外かもしれない」

「おう、よく知ってるな」

「私、ずっと、ずっと見てきたの。お兄ちゃんが何をしてきたか。気持ちはあの頃とちっとも変わらない。私はお兄ちゃんが好き。大好き」

「そこまで言われたらな」


 絶世の美少女は健在で、十八歳になった今ではスタイルも顔も傾国の美少女クラスだった。

 十人中十人が振り返りそうな、美少女っぷりとなっている。


「私いままで誰とも付き合ってこなかったから。百人以上に告白された」

「お、さすが美少女」

「でも、どの人を見てもときめかなかった。心が動かされることなくて、やっぱりカイトお兄ちゃんじゃなきゃダメなの」

「そっか」

「これってインプリンティングだよね。分かってる。でももう我慢できない」


 ルルちゃんが走って道を渡りこちらきて抱き着いてくる。

 めちゃくちゃいい匂いがする。爽やかな甘い匂い。女の子の匂い。

 そして温かくて柔らかい。母性を感じさせる。


「カイトお兄ちゃんじゃなきゃダメなの。この感じ、この匂いじゃなきゃ」


 俺も匂うのかもしれない。変な臭いじゃなきゃいいが。


「結婚してください」


 抱き着くのをやめて一歩下がると、ガバッと頭を下げる。

 綺麗な黒髪ロングがばさりと落ちる。


「ああ、わかった。そこまでいうなら……結婚、するか」

「やったっ、やった。私、一生ついていく。お兄ちゃん、大好き愛してる」


 ちゅっ、ちゅちゅちゅ。


 激しくキスを繰り返してくる。

 こんなに激しい子だと思わなかったので、ちょっとびっくりする。


 こうして俺とルルちゃんは婚約し婚姻届けを提出することとなった。

 小学二年生の恋がこうして実ることもあるらしい。

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