第176話「エピローグ:俺の人生で得た教訓。 因果応報、そして、情けは人の為ならず、だ」

最終話です。


何卒宜しくお願い致します。


長い間のご愛読ありがとうございました。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


……時が流れた。


北の砦のオーガ討伐から、約5年の月日が経っている。


オーガ討伐以降、我が所属クラン、グランシャリオは国内外の数多の依頼を完遂。

大勢の人々から、とても感謝された。


今やグランシャリオの名は、スフェール王国のみでなく全世界に轟いている。


そして……この5年の間、いろいろな事があった。


フェルナンさんは、婚約中だった幼馴染、

ブラントーム伯爵家令嬢のオレリアさんと結婚。

婿入りし、ブラントーム伯爵家次期当主となった。

結局、4年半あまりグランシャリオでクランメンバーとして働いて、

冒険者を引退する事に。


引退を想定していたローラン様の口利きもあり、

冒険者引退後の仕事は、王国騎士隊入り。

上級士官として、しかるべき役職に就くそうだ。


婚約後に、ブラントーム伯爵邸へ引っ越しし、暮らしていたから、

フェルナンさんの生活環境に大きな変化はない。


もろもろの悪行?により、国王陛下と宰相閣下から降格された、

アングラ―ド男爵家は、王国の辺境へ転封。


下手な事をすると、お取り潰しとなるから、

善政を行い、父、息子ともども、おとなしくしているらしい。


「領民と助け合いながら暮らしている」という報告もあり、

これでまあ、安心だろう。


安心に加えて、めでたいことに、フェルナンさんと愛するオレリアさんとの間には、

去年息子が生まれ、ブラントーム伯爵は、日々、孫を溺愛しているそうだ。


後、10年したら、ブラントーム伯爵は「隠居する」と宣言したので、

フェルナンさんの人生の道筋が見えた事となった。


今後は、上級貴族になるべく、貴族社会における作法修行、

人脈作りにいそしむ事となる。


伯爵となっても、フェルナンさんとの友情は、一生続いて行くに違いない。


グランシャリオのリーダーたるローラン様、

バスチアンさん、セレスさん、クリスさんはまだまだ冒険者現役。


貴族の監察官でもあるローラン様の尽力で、スフェール王国には善政が続いている。


バスチアンさんは、ストイックに自身を鍛える日々を送っている。


セレスさんは、一時期引退を考えていたらしいが、撤回。

結局、冒険者を続けている。


クリスさんは、魔法の研究、

そして大好きから生じた様々なデータベース作りに余念がない。


そして、俺とシャルロットはといえば、オーガ討伐2年後、

俺が18歳、シャルロット20歳で結婚。


購入したお気に入りの新居で暮らしている。


相変わらず熱々で、シャルロットからは、だいしゅき光線が乱射。

俺もシャルロットが愛おしくてたまらない。


このやろ!

リア充爆発しろ!

と言われそうだが、本当に楽しい日々を送っている。


ちなみに子供はまだなし。

これからじっくり考えようと思う。


楽しい日々の代償として、生死の狭間に立ち、緊張感ある冒険者を続けながら、

俺とシャルロットは、引退後の準備に余念がない。


騎士爵家末弟から冒険者になった俺は今や平民、

貴族家使用人の娘だったシャルロットは、元々平民だから、

身分的な優遇は全くナッシング。


それゆえ、しっかりと将来への準備をしておかねばと思ったのだ。


あれから、一軒家を更にひとつ。

マンション、アパートをひとつずつ、ギルド不動産部へお願いし、購入。

自宅以外の4物件は全て賃貸物件にしてある。


万が一何かあっても、月々、副収入が得られるようにしたのだ。


実はローラン様から、後継者が居ない上級貴族家の養子にという話もあったが、

感謝し、恐縮しつつ俺たちは固辞した。

お断りする際、角が立たないよう、言葉を選んだというのは当然である。


冒険者引退後は、「今とは全く違ういろいろな仕事をしてみたい」

という夢もあったし。


ふたりで、いつか、

居酒屋ビストロ口笛亭みたいな店をやってみたいというのも、そのひとつ。


まあ、本音を言うなら、窮屈な貴族社会に縛られるのが、嫌だったからだ。

フェルナンさんみたいに、シャルロットが貴族家令嬢だったら、

また話は違っていたかもしれないけどね。


バスチアンさんから言われた、グランシャリオのリーダーにという話も全くの未定。

まあ、人生はなるようにしかならない。


選択肢を増やし、日々の努力は怠らないようにしようと心がけている。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


さてさて!

俺を散々貶め、追放した奴らのその後にも触れておこう。


まずは、俺の実家アルノー騎士爵家。


長男のクソ兄貴が家を継いだが、才覚、甲斐性のなさから、すぐ窮乏の極致へ。

このままではお家断絶。

にっちもさっちもいかなくなり、絶縁を言い渡したにもかかわらず、

俺に助けを求めて来た。


長男のクソ兄貴には接近禁止命令を出してあるから、

土下座し、金銭的援助を求めて来たのは、次男のクソ兄貴。


絶縁はしたが……実家には、ここまで育てて貰った恩がある。


シャルロットとも相談し、どうしようかあ、と大いに迷ったが……

困り果て、ローラン様に相談したら、

「応じて金を渡しても、またせびられるだけ、私へ任せるように」

と言われ、『名案』を出してくれる事になった。


結果、ローラン様が動いてくれ、表向きは王国からの命令という形で、

アルノー騎士爵家は、アングラ―ド男爵家同様、

『王国辺境の地の開拓』という役目を与えられ、

わずかな既存領地を返還、支度金を持たされ、

王都を出て、新たな領地への転封という沙汰に。


クソ兄貴たちからは、不平不満を恨みがましく言われたが、


「貴族家の救済は、いち冒険者の自分だけではどうにもならない。ローラン様から、王国に話を上げて貰った。王国の最終判断ですよ」


と言うと、黙ってしまった。


まあ、貧乏騎士爵家では、王国とローラン様には逆らえないし、


「弟が動いてくれたからこそ、この結果が出た。このままアルノー家がなくなるよりはマシ。地道にお家再興をはかろう」


とクソ兄貴たちは考え、納得して従う事に。


そして俺をポイ捨てリリースしたクラン・シーニュ。


単刀直入に言えば、このシーニュ、今はもう存在しない。

冒険者ギルドへ、解散届けが提出されたから。


ようは大変な悪評がたったので、新規入隊の冒険者がなかったのである。


残ったふたり、ミランダとシーフ職も、自分が悪いと思っていないので、

責任のなすり合いをして、王都の街中で大喧嘩。


魔法が飛び、武器を振り回す派手な喧嘩だった為、幸いけが人こそなかったものの、

周囲の器物を大破損。


当然、通報され、衛兵隊によりミランダとシーフ職は逮捕。


ざまあ!というか、堕ちるところまで、堕ちたという感じ。


裁判の結果、クラン・シーニュは解散。

ミランダとシーフ職は、高額の弁償金支払いの上、ふたりとも王都を追放。

行方知れずとなってしまった。


両名の生死は勿論、現在どこで、何をしているか、一切不明だ。


……というわけで、実家を放り出され、何度も人生に絶望した最底辺の俺だったが、

あのドラフト会議による奇跡的な一位指名から、大逆転。

運命が激変し、最高の伴侶、素晴らしい師匠と仲間、気心の知れた友人と出会い、

幸せなバラ色の人生を歩んでいる。


俺の人生で得た教訓。


因果応報、そして、情けは人の為ならず、だ。


俺を追放した奴らの悲惨な末路。

そして逆に助け合った人達の現在の幸福度で分かるだろう。


興味がある人は、ぜひ、ことわざの意味を調べて欲しい。

心に刻む価値はある……かもしれない。


じゃあ、皆さん!

縁があったら、またどこかで、会おう。《完結》

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冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話! 東導 号 @todogo

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