第4話 従者召喚
新たな学校生活が始まり、一週間が経過した。見た目や力はともかく、気のいい奴らばかりで俺も案外楽しく過ごせている。
そして今日、初めての成績をつけられるテストが行われる。それは、従者召喚だ。従者召喚では、魔力を使い、自分ができる最大限の魔法陣を描いて、自分の従者を召喚するという儀式だ。テストは一人一人が全校生徒の前で行い、その場で点数をつけられる。
点数配分は、召喚された従者の種族で、もちろん上位種族になるほど点数が高い。そして次はどれだけ従者に慕われているかをチェックされる。従者召喚の名前の通り召喚されるのは自分の命令に背けない従者だ。しかし、反発心があるか無いかは判断できるので、それも点数に数えられる。最後は魔法陣の精密度だ。これは従者の種族レベルでだいたい分かるが、粗野な魔法陣でも出鱈目な量の魔力を流し込めば上位の従者を呼び出すことができる。
その説明を受け、俺らは早速試験会場に移動した。そこにいる生徒は同級生が俺をあわせて16人と先輩方が二十名ほど見学に来ている。
まず最初に呼び出されたのはリンダだ。彼女が俺が受けていない試験の最優秀者だったらしい。
リンダが召喚魔法陣を描くのにかかった時間は約2分ほどで、これは驚くほどの早業だ。リンダが祈るポーズをした瞬間、目の前が光に包まれて一匹の魔物が居た。その魔物は飛行鯨フライングウェイルで竜種と鯨種の混血だ。言うまでもなく、上位種族で希少な魔物だ。飛行鯨フライングウェイルはリンダの前で一礼した。これは従う意志があるということだ。
「リンダ・ヴォーン。飛行鯨フライングウェイルを召喚。種族点9/10、追随点10/10、魔法陣点7/10!」
それを聞くと皆の歓声が上がった。合計点が二十五点を超えたものは一人前というルールがあるらしい。そのため、二十六点だったリンダは無事一人前だ。しかし、俺からすれば最初にそれを持ってこられると後の自分の事を考えてちょっと落ち込んでしまう。
その後も皆が着々と召喚を済ましていき、一時間ほどたった後にやっと俺の番がきた。俺が魔法陣を描こうとしていると―――
『晴人。ここは俺に任せてや。俺最近何もできてなかったからさ。ちっとぐらいすごい従者召喚してお前さんにプレゼントしたいんや』
(…………そっか。分かった。じゃあ 狂乱人格ライオット発動!!)
という訳で、俺はこのテストをすべてディオスに任せることにしたんだが、それが失敗だった。なんとディオスは俺にすごい従者を召喚しようと粉骨砕身の思いで頑張ってくれた。それは良いのだが、誰も見たことのないような特大魔法陣を描きやがった。
それから出てきたのは一体の悪魔だった。
「お呼び出しでございますか、我が君?」
「チッ、一人しか無理かよ。お前なんか仲間とか兄弟とかおらんの?」
「私の兄弟なら二人と弟のペットがいますが、お呼びしましょうか?」
「おお、まじで! それならよろしく頼むで」
「はは、我が君!」
その後悪魔は一度姿を消して、数分後に戻ってきた。それが問題で、とんでもないものを連れてきてしまった。
先程の男、ヴァーノンと名乗ったその悪魔は禍々しい二本角をはやしている。真っ黒でボロボロな服、片目を覆っている黒い髪。種族は攻撃型悪魔ファイターデーモンというらしい。物理攻撃や、背負っている魔剣アースクエイクでの攻撃を得意としているらしい。見た目は普通に大人っぽく来た人たちの中で一番貫禄がある。
宙に浮かんで楽しげに出てきた女の人の名前はニューでヴァーノンと名乗った悪魔の妹らしい。黄色くツインテイルに括ってある髪、綺麗な肌、嬉しそうな表情とは裏腹に、奥底に秘めている魔力量は計り知れない。見た目の年齢は十四か十五ぐらいだが、俺の予想では精神年齢は致命的に低い。そんなことはもちろん口には出さないけどね。
彼女の種族は魔法型悪魔ウィザードデーモンで彼女によるとーーー
「私は爆発させるのが好きだし得意だよ!」
らしい。「この娘はほんま危険や」ってディオス自身が言ってしまうぐらいやばいらしい。爆発を好きと言う異端児だからやばいのは流石の俺でもわかる。
次に出てきた男、というより男の子の名前はルイで、可愛らしい見た目な六、七歳ほどの男の子だ。種族は使役者型悪魔サーバントデーモンといい、その男の子が使役した巨大な竜が横に座っていた。その名前はラドンというらしく―――
「ラドン可愛いでしょ?」
だそうだ。ちなみにこの竜はこの世界で上位に立つ強さを持つ竜種と言われている巨大死竜ギガントデスドラゴンだ。ランクで言うとA+という災害級らしい。それを使役するこのガキルイはそれより強いと言うことだ。本当にどうしてこの様な規格外の存在を一気に四体も召喚してしまったのか……。
そんなことは一旦忘れて、少しランクの説明をしよう。この世界はF-ランクからS+まである。F-ランクの者五名でやっとFランクの者一人と同レベル。Fランクの者五名でやっとF+の物一人と同レベルの様な感じだ。しかし、上位になる程対処は難しくなり、一個下のランクとの格差が開く。S+ランクに100名Sランクをぶつけても相性次第ではS+のものが勝つこともある。
ちなみに、この世界でのランクの基準は分かり易く言うとこんな感じだ。
ランクF- : 小動物レベル
ランクF :一般人レベル
ランクF+ : 格闘技選手レベル
ランクE- : 中型動物レベル
ランクE :大型動物レベル
ランクE+ : 下級魔物レベル
ランクD- :下級魔物の群れレベル
ランクD :知恵のある低級魔物レベル
ランクD+ : 知恵のある低級魔物の群れレベル
ランクC-:通常騎士レベル
ランクC :中級魔物レベル
ランクC+:知恵のある中級魔物レベル
ランクB- : 上級魔物レベル
ランクB :知恵のある上級魔物レベル。転生すぐの転生者や召喚者レベル。
ランクB+:下級、中級魔人レベル。
ランクA- : 上級魔物。
ランクA :上級魔人の特殊個体レベル。
ランクA+:上位種族国王レベル。《崩壊コラップス》
ランクS- : 竜族や竜人族レベル。《破壊デストロイ》
ランクS :覚醒魔人や覚醒魔物レベル。
ランクS+:理解不能レベル。
低級魔物はゴブリン、スライム、死人族などです。中級以上の魔物は群れるものはほとんどいなく、群れている場合は特殊個体な可能性が高い。そして特殊個体というのはスキルもしくはギフテッドスキルを保有している事を指す。
ちなみに俺は今A+レベルである。頑張ってスキルを使いこなしたらギリS-に乗るかどうかっていう感じだ。クラスの他の人たちは、召喚者の二人はAランク、残りはB-〜B+程度の強さだ。桁外れに強いのが俺の(というよりディオスの)十者で全員S-ランクだ。本当に化け物揃いである。
「ディオス・ディ・ブラン。理解不能な魔法陣を使ったため解析不能。点数は暫定点で全て8点とさせていただきます」
ディオス何やってくれとんじゃごらーーーー!! ふう。少し暑くなってしまいました。しっかり体の主導権を奪い取り交渉してみたが、先生もわからない魔法陣を書いた自分を責めろと言われてしまった。
何故そのようなことを知っているのかをディオスに問い詰めた結果、古代の魔法の書、グリモワールを城で見つけたらしい。実は俺が寝ている間は主導権が自動的にディオスの物になるので、その時にそっと部屋で魔法の勉強をしていたとのことだ。呆れるしかないことだ。
しかし、彼のおかげで無事(?)従者召喚を乗り切ったのであった。
最強の二重人格者 @JINUSJPCA
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