仕合わせに触れる
風と空
第1話 忘年会 それぞれのカタチ
町内会館を貸し切って商店街振興組合の忘年会の日。
商店街店主達が集まり、町内会長が音頭を取って始まった。
「今年も厳しかったなぁ」
酒屋の
「まぁ、それはどこも一緒さ。だが源、今日くらいは良い事を話そうや」
「ま、そうだな。でも面白え事と言ったら和菓子屋のとこだろうよ。なぁ、国?」
源は、向かいに座る和菓子屋の店主
「ん?ああ、コイツしつけぇんだ。諦めないしよぉ」
苦虫を潰した様な顔をしながら酒を煽る国昭。
「ハーイ!ソノタメニニホンキマシタカラ」
ちゃっかり自分もお酒を飲んでこの場に馴染んでいるジェイク。フレンドリーな性格もあって、今では商店街に溶け込んでいる。
「見てるコッチは面白かったがなぁ。外掃除に出てきた国昭の前に土下座して「ヤトッテクダサイ」だからな」
「ああ、酒屋は国んとこの真向かいだったか。俺の
「ったく。見てたんなら助けろってんだ」
源と繁がカラカラと笑いながら話す向かいで、国昭の表情は苦虫を潰したまま、テーブルにある酒をコップにつぐ。因みにこの男この表情が常である。
「オヤカタノワガシスゴクオイシイネ。デシニナルノハトーゼン!」
朗らかに笑うジェイクは国昭の肩を組み、もう片方の手で空のコップを高く掲げる。
「だー!テメェは弱いんだから飲むなって言ってただろうが!」
「オヤカタソレハナイデショ」
向かいの席で戯れ合う二人を見て、しみじみ源が話し出す。
「まぁジェイクが居てよかったよ。国昭腕は良いが、接客がなぁ…… 」
「言えてるな」
繁も同意する位の国昭の和菓子屋が続けてこれたのは、一重に地域の付き合いや組合の助けがあったからだが、今年は違う。
「…… まぁ、助かってるがな」
ボソっと言う国昭も認めているジェイクの働きで、客足が伸びたのは皆も認めている所だ。
「オヤカタボクモタスケラレタ!チシキモオシエテクレタシ、マチガッテルトコロfollowシテクレタ。ソレニゲンサンヨクボクノコトソウダンニノッテクレタ。シゲサンサシイレヨクシテクレタ。ニホンジンヤサシイヒトオオイデス」
ジェイクの言葉に酒が更に旨くなったのか、ご機嫌に飲み出す三人。人の良い集まりなのだ。
余談だが繁の元にも見慣れぬアメリカ人が訪れるのももう少し。商店街はまた新たな新人を迎えて、賑やかになっていく。
仕合わせに触れる 風と空 @ron115
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