第三章 第130話 懇願
マルグレーテ・マリナレスと名乗った女性が、
まず自分は、とある人物の命令でオズワルコスの監視を続けていたと言う。
その人物とは、かつての「学校訪問」の
その時、お互いに自己紹介をしたので、全員がその名を耳にしたのは確かである。
しかし、記憶していたのは
マルグレーテは響子たちを助けた理由として、
オズワルコスを監視し、日本人が危害を加えられそうになったら保護せよ、と。
グラウンドで起きていたこと――
彼女によれば、オズワルコス配下の者たちと違って、エーヴァウートと言う男が
何しろ、
頭を下げるマルグレーテに、一同は複雑な表情で黙り込むしかなかった。
そもそも蓮司たちが拉致されたのは、彼女のせいではないのだ。
責任を問うのは、筋違いにも程がある。
それでも、もし助けてあげていたら……という気持ちが
その理不尽さが分かっているが
次に、校長室で起きたことについて、説明があった。
そもそも学校には、
建設作業自体は計画通り
日本人の持つ知識や技術、そして
そして肝心の校長室での出来事だが――
しかし
加えて、彼女はごく短時間に
それを、職員室側に
マルグレーテは、まず魁人については、当然命を奪うことも
その理由として、日本人の殺害の許可が出ていないことと、その
組織への潜入方法や、
実際のところは、彼女の
純一の通訳を介して、時に質問を投げかけながら、ここまでの大まかな事実について、とうとう知ることとなった学校勢九名。
彼らの
それは一端を知っていた久我夫妻にとっても、同様なようである。
「なるほど……」
橘響子が、何度目になるのか分からないため息の
目を
執行部というものが実質的になくなった今、その場の誰もが響子のことを
その執行部の追放劇において、とても大きな役割を果たした
「マルグレーテさん」
第一声で、響子はまず、自分たちを救った彼女の名前を口にした。
「何でしょうか」
「お話を
「伝えておきましょう」
「まずひとつお聞きしたいのですが、あなたはこれからどうされるのですか?」
響子の問いを通訳され、小首を傾げるマルグレーテ。
「……どういう意味でしょうか?」
「あなたはオズワルコスの監視のために、レアリウスに潜入したと
「それはその通りです。今回のことを
「でしたら、ひとつお願いがあります」
「何でしょうか」
たった今、これ以上ないほどの助力を受けた身である。
ここからさらに、響子は何かを求めようとしている。
「既に救ってもらった立場で更なる願いごとをするなど、図々しいにも程があるのは百も承知の上で、恥を忍んでお願いいたします。今だけでも構いません。私たちがこれからする話し合いに参加して、助言をいただけないでしょうか」
「……」
響子の
しかし同時に、好意を積極的に
フードこそ取ったが、その表情から内心を推し
「私たちは現在、多くの問題を
響子は、悲しそうに目を伏せて続けた。
「多少でも知っている人たちは……八乙女さんも……皆、いなくなってしまいました。そのすべてが私の責によるものだと
響子は立ち上がり、再び頭を下げた。
「……私はこれまで、私たちを襲った様々なことに対してまったく、何の役に立ちませんでした。
そう言うと、響子は膝を折り、
そのまま
皆、驚いて腰を浮かすが、響子の背中からは自らへの干渉を許さないと言う意志が
通訳する純一も、なるべく響子の真意を間違いなく伝えるべく奮闘しているが、動揺を隠せないでいる。
「このような
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