第三章 第114話 パンドラの箱
何かこれ、
今、自分たちのパーティは
あのやたらとイキってくる
正直言って申し訳ないが、
要するに――今はボスを倒すチャンスだと言うことなのだ、と。
(こっちのパーティは、リーダーが教頭
(
(
(あとは……自分も含めて、
(それに……何となくだけど不破
まあ内情はともかく、せっかく七人パーティでボス一人をタコ殴りに出来るチャンスが到来しているのだ。
それだと言うのに……さっきから
(いや、分かってるって。物理的にボコボコにするわけにいかないことぐらい)
戦闘とはいってもあくまで論戦なのだから、複数人が一斉にしゃべりかかったところで何の意味もない。
それでもやはり敵は強大で、響子も沙織もダメージを負って下がらざるを得なくなってしまっている。
葵も手を出してみたら、酷く噛みつかれて
そう考えると、七瀬は戦闘スキル持ちではない割に、善戦しているように思える。
すると――――
「パンドラの、箱……」
「まあ、もしかしたら伝説のように、最後に『希望』が残っていると言うことがあるかも知れないが……試してみるかね?」
(パンドラの箱って……何かファンタジックな話になってきたねえ)
「あの……ちょっと私一人で判断しちゃマズそうなので、相談してもいいですか?」
「構わんよ。存分に、と言ってやりたいところだが、こちらにも都合がある。そうだな――――五分だ。五分以内に結論を出してほしい」
「わ、分かりました。それじゃ、後ろの応接スペースで……」
そう言って、七瀬はメンバーたちに移動するよう
鏡龍之介は何を思うのか、座ったまま腕を組み、目を閉じてしまった。
その様子に、執行部の残りの三人は
そして、部屋に入ってからここまで
応接スペースにぞろぞろと集まった七人――橘響子、花園沙織、不破
とは言え、誰もソファに座ろうとはしない。
全員が座りきれないと言うこともあるが、とてもじゃないがのんびり議論するような状況ではないことを、
「そんなわけで、選べと言われちゃったんですけど……どうしましょう」
「黒瀬さんたちがしたと言う妨害の中身を聞き出すかどうか、でしたね」
七瀬の発言を響子が補足する。
「個人的には、そもそも彼女がそんなことするわけないと思うけどねえ」
「私もそう思いますよ。瓜生先生にしたって、そんな人じゃないですし」
沙織の意見に同調するのは、葵だ。
「そりゃあ人間にはいろんな面があるし、いいところもそうじゃないところも
一度言葉を切り、再び葵は続ける。
「だからこそ私、言えると思うんですよ。黒瀬さんや瓜生さん、早見さんたちも決してそんなことをするような人たちじゃないって。仮にもし、何かしていたとしたら――きっと何か大事な意味があるんじゃないかって」
思いが爆発したように語り続ける葵を見て、樹は思った。
(何かもっと早く、こんな
(そうしてればもしかしたら……)
そう言った明るくてオープンな雰囲気は、転移当初こそぎこちなかったにしても、次第に
それが……衝撃的な朝霧校長の死去以来、がらりと変わってしまった。
事件以降、学校勢の中に
誰もが自らの
樹は知る
「
「えっ……私ですか?」
花園沙織が、何気なく美咲に意見を求める。
集められたからには、考えを聞かれて
「正直、私は……怖いです」
「それは鏡さんの言う『パンドラの箱』ってところのことかしら」
「そう、ですね……」
(まあ不破
「如月せんせー」
「……」
「如月せんせー?」
「……え、えっ!?」
「せんせーはどう思うっすか? その『パンドラの箱』ってやつのこと」
「……」
「ちょっと如月さん、大丈夫? 気分でも悪いの?」
樹の問いに黙り込んでしまう朱莉を気にかけて、沙織が声をかける。
「いえ、だ、大丈夫です……」
「そう? 何だか顔色がよくないけど」
「――少し心配ではありますが、どうやらあまり時間もないようです。私の考えを述べてもいいでしょうか? 花園さん」
「いやだわ橘さん。私が議長ってわけじゃないんだから、気にしないで話してくださいな」
「それでは」
小さく咳払いをしてから、響子は話し始める。
「結論から言えば、ここは一旦『スルー』したらどうでしょう」
「スルー……っすか?」
「そうです、諏訪さん。鏡さんの言っていることは気になりますし、
「あ、はい」
響子は、先ほどから黙っている七瀬に声をかけた。
「あなたは先ほど、質問が三つあると言っていましたね?」
「……はい」
「一つ目と二つ目に回答をもらってから、三つ目を尋ねるとも言っていましたが、まだ一つ目だけでこの状態です。先に二つ目に話を移し、場合によってはそのまま三つ目の質問をぶつけるということは可能ですか?」
「うーん……」
唇に人差し指を当てながら、七瀬は唸った。
「先に二つ目の話に移るのは別に構わないんですけど……三つ目って、いわば切り札と言うか、必殺技みたいなものなんですよね……」
「必殺技、ですか?」
「はい。ってか、ボスを倒すための特殊アイテムと言うか……」
「……はい?」
(おいおい……いや、さすがは加藤
図らずも自分と同じようなことを考えていた七瀬に、心の中でツッコミを入れつつ、称賛を送る樹。
そんな樹を、七瀬はちらりと見て続けた。
「確実にダメージは与えられると思うんですよね。でも……手負いになった鏡先生が何をしてくるのか分からないんです。もしかしたらヤケクソになって、その『箱』を向こうから
七瀬の視線と発言に、樹は思わず
そして、小さく
七瀬も、樹に目で答える。
「そんなに恐ろしい情報を、あなたは持っているのですか?」
「はい、多分。ただ、私思うんですけど、三つの質問の答えって何て言うか、バラバラじゃなくてきっと関係しあっているんじゃないかなあ、と。だから一つ分かれば、そこから芋づる式に
「そう……」
答えながら、響子は不安そうな表情を隠さない。
それは、いわば
「大丈夫なの? 加藤さん……」
「加藤さん……」
沙織と葵も同様の表情をしている。
そんな二人へ、そしてまだ暗い表情で
「大丈夫っすよ、皆さん。加藤せんせーには僕がついてるっすから」
「相変わらず馴れ馴れしいなあもう」
そう口を
「それじゃ後半戦よろしく、
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