第三章 第109話 橘響子の咆哮
彼らの視線が、龍之介一人に注がれる。
その視線には、さまざまなものが入り混じっていた。
恐れ、疑念、混乱、
しかし龍之介は何も言わず、黙ったまま自席に着いた。
自席とはもちろん、校長の場所である。
職員室は、異様な雰囲気で満ちていた。
管理職――――
教頭
低学年部――――
一年一組
一年二組
三年一組
高学年部――――
五年二組
六年一組
六年二組
保護者――――
校外関係者――――
――以上、九名。
久我純一(執行部実行班担当)と
ちなみにだが、男女別に分けると男性四人、女性八人である。
十二名――――転移当初の二十三名から、ほぼ半減したと言える。
このような状態になってしまうことを、当時の誰が予想し得ただろうか。
元々それほど広くなかった職員室はほぼ満席だったはずが、今ではあちこちに
そんな空気感の中、龍之介は一同をぐるりと見回し、第一声を発しようとした。
しかしそれが言葉になる前に、
「鏡さん」
橘
「端的に求めます。先ほどグラウンドで繰り広げられていた一連の出来事にについて、
「……いいだろう。どのみち、伝えようと思っていたこと。そのために
一瞬だけ
久我英美里の肩がわずかに震える。
「なに、宣言通りのことをしたまで。私は言ったはずだ。どれほど有能な人材であっても、役目を
「連れ去られた五人が役目を全うしていなかった、と?」
「そうだ。のみならず、彼らは元の世界へ帰ろうと言う我々の足を引っ張り、あろうことか妨害まで始めたのだ。
「具体的には?」
「……何?」
橘教頭は、語勢をまったく緩めずになおも問い続ける。
面食らい、思わず問い直す龍之介。
職員室の前方、校長の席と教頭の席で唐突に始まった
「まず、
「……」
「
更なる追及を始めたかと思いきや、響子は突然その
龍之介も他の者たちも、虚を突かれたかのように呆然とする。
そして――彼女はその場にゆらりと立ち上がった。
響子の視線は、隣りに座る龍之介に照準を定めた。
「聞いておいて何ですが、先にはっきり言っておきます。
彼女はここで一度、言葉を区切った。
「――あなたは仲間を……大切な仲間を、一体何だと思っているのですか!?」
「……」
龍之介を突き刺すような視線の奥に、何か光るようなものが見られる。
鋭い眼光とでも言うべきか、それとも別の何かなのか。
「確かに私は、あなたを我々『
今のところ、龍之介に反論しようと言う様子は見られない。
「一方的に提案された新しい体制についても、かなり恣意的なものを感じましたが、その思いを敢えて口に出すことはしませんでした。現状を考えれば一応、
龍之介だけではなく、
「実際、いわゆる『
再び、言葉を区切る響子。
口元を震わせたまま、彼女は
「私は……いえ、私たちはここから一部始終を見ていましたよ、鏡さん。話し声こそしっかり聞き取ることは出来ませんでしたが、あなたと純一さん、そして秋月さんがあの見知らぬ者たちを
閉じられた両の
「私たちの大切な仲間を! あのような目に遭わせた!」
両目をカッと
「
これほど感情を
そんな彼女の様子にある者は驚きで表情を固くし、ある者はつられて
「
それはほとんど悲鳴だった。
「神代君も天方君も、あなたの教え子でしょう!? その二人に対して一体どんな理由があったら、あれほどまでに
対する鏡龍之介は――黙っていた。
響子の叩きつけるような視線を正面から受け止めながら、ひたすら黙っていた。
その態度が、響子の怒りを加速させた。
「何とか言ったらどうですか!! あなたは――――」
その時、職員室の扉が
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