第三章 第105話 天声会議 ―3―
しかし、一応でも自分の
「ハンブレーウス、『
「……何ですと?」
またもや突然、正気を取り戻したアーラオルドだが、今度は
「カルヴァレスト殿、貴殿に言われずとも、
「ならば、また取り返せばいいではないか」
「……何ですと?」
「だから、
しれっと言い放ったイングレイ。
口を
他の三人も、少し驚いた
「簡単に言わないで欲しいものですな。
「いや、大したことはなかったと聞いているが?
イングレイは
つまり、聖会の
襲撃そのものには
それなのに、聖会に
研究者としてのアーラオルドの能力は文句のつけどころがなく、高い。
しかし、野心が大きいこと、成果を出すためには手段を選ばないことを、イングレイは危険視している。
どちらもある程度は必要な素養であることは分かっているのだが、アーラオルドの場合、それらがあまりにも度を越している上に、本人が精神的に不安定であることが危険性に拍車をかけているのだ。
「しかし、入手し直すとなれば、それなりに手間がかかることは明白でしょうが」
「それでも不可能ではない。今、そこに迫っている危機を回避するために必要な手続きだと考えてはどうだ?」
「いやしかしですな……」
「ハンブレーウスよ、それならもう一つ教えてやろう」
ここでイングレイは、
「言うまでもないことだが、『
「何を今さら言っているのやら……当たり前のことでありましょう」
「その
「な、何ですとっ!?」
身体を乗り出し、血走った眼を向けてくるアーラオルドから微妙に視線をずらしながら、イングレイは続けた。
「まあ情報と言っても、一つの
「その通りだ、カルヴァレスト」
ここで口を挟んできたのは、
彼はアーラオルドほどではないが、「
かつて
「もちろん、愚にもつかない偽情報はいくつも現れては消えていったようだが、それすらもいつしか聞かれなくなってしまったと言う。雲をつかむどころか、その雲さえ見つけられないほどに手がかりのなかった『
「そうだな、フレイヴァローア」
「それを今、お前が知っているなどと言ったところで、到底信じられるものか。
「確かに私自身が調べて、裏を取った情報ではない」
イングレイは落ち着いて答えた。
「しかし、情報源こそ漏らすわけにはいかないが、かなり確度の高い手がかりだと私は思う。少なくとも糸口にはなり得るのではないだろうか……」
「は、早く、早く言え! 言うのだ、カルヴァレスト殿っ!」
アーラオルドはまたしても正気を失いかけている。
面倒なことにならないうちにと、イングレイは言葉を続けた。
「『
「…………は?」
「地上に、ない?」
アクセリオ・インメルバルツとカミレヴィーラ・エルヴェスタムは口を
「ど、どういうことなのですかな? カルヴァレスト殿?」
「言葉そのままの意味だろうな」
「では、このエレディールを
「決して見つかることはない……ということだ」
「うがあ――――――――――――――っ!!!!」
両手で頭を抱えながら、
イングレイの
予想出来た反応とは言え、「
この二人は本気で「三つの神器」から、
もしかして自分が知らされていないだけで、そのための方法か何かを見つけ出していたのではないだろうか、と。
情報元である
もちろん、敢えて
しかし、それはないだろうと何故か確信してもいるのだ。
――そもそも巫女は
アーラオルドが「花冠」を手にしてもう十年以上経つと言うのに、現在に至るまでの
それこそが答えだ、とイングレイは考えている。
つまり、彼女の
そして、必要があればいつでも取り戻すことが出来るという余裕の表われなのだ、とも。
それはともかく、この会議を開いた目的を忘れてはいけない。
何としても、アーラオルドたちに「
そのために、
「
アーラオルドがこれ以上の狂態に移行してしまう前に、その
「仮に一般人がこの情報を聞いたのなら、それ、貴殿らのように絶望するしかないのかも知れないが、我々レアリウスならそこから類推する
「……糸、ですと?」
「そうだ。
「もったいぶらずに、核心を述べたらどうだ? カルヴァレスト」
「いいだろう、フレイヴァローア。『
そう言って、イングレイは
――――――――――――――――――――――
戦いの結末は、意外に早く
割れて
主神
暗黒の世界に墜ちたアルディスは、その
――――――――――――――――――――――
「……まさか……!」
「そうだよ、フレイヴァローア。『
「地下だとっ!?」
「落ち着け、ハンブレーウス。まあ、魔界の王だの魔神だののくだりは笑止千万だがな。そもそも
「――……アルド・ゲーゼス」
「そうだ。
「しかし、カルヴァレストよ」
驚愕から多少立ち直ったヴラキュール・フレイヴァローアが、問う。
「仮にお
「そうだな、フレイヴァローア。しかし、そこからさらにもう一本、繋がる糸が貴殿には見えぬか?」
「さらに繋がる……糸?」
「――――『
呟くように答えたのは、アクセリオ・インメルバルツだった。
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