第三章 第103話 天声会議 ―1―
「本来なら、
イングレイ・カルヴァレストは重々しく切り出した。
「
彼以外の四人の
しかし、その
もちろんいつものことであるし、そんなことは彼の想定の
「まず最初に言っておかねばなるまい。我々レアリウスは現在、
五司徒に動きはない。
イングレイは続ける。
「そして、貴殿らには思い出してもらいたい。そも、我々レアリウスとは何のために生まれ、長きにわたり
ここでイングレイは
次に自分が口を
「その合一までに残された時間は、あまりにも少ない。望星教会などにかかずらわって浪費するなど
「ふざけるな!!」
ダンッ、という
発信者は――アクセリオ・インメルバルツ。
加えて言えば、イングレイの腹心であったはずのヘルマイア・オズワルコスを自らの陣営に寝返らせ、
「カルヴァレスト、貴様……正気で言っているのか? よりにもよってあの
「ならば問おう、インメルバルツよ。
「無論だ。このような事態など十年前からとっくに想定している。そのために
「その準備と言うのは、例の『
「
「
イングレイは
「愚か……とは、聞き捨てなりませぬな」
眉をひそめてイングレイの言葉に反応したのは、アーラオルド・ハンブレーウス。
そして、先ほどイングレイが触れた「新・人形計画」を、アクセリオと共に強力に推進しているのも彼なのだ。
イングレイはアーラオルドに視線を移して言った。
「愚かという言葉以外に適切な
「
それでもアーラオルドは基本的に、誰に対しても丁寧な口調を崩さない。
しかしそれは、必ずしも相手に
実際、アーラオルドの
アーラオルドの口調は、他人に決して本心を悟らせないための、ただの方便に過ぎないものだとイングレイは断じている。
「あの時の自分を、私は今でも恨めしく思っているよ、ハンブレーウス。計画があの時点で
「そのような
「……それは確かにそうだな、ヴール――いや、フレイヴァローア」
逸れかかった話を元に戻したのは、ヴラキュール・フレイヴァローア。
彼は
しかし、現在レアリウスが直面している問題――運営方針については意見が対立しており、ヴラキュールはアクセリオやアーラオルドに
「では、話題を戻そう。私が議題として提案したいことは二つだ。一つは先ほど言ったように
イングレイがさらりと言っても、場は静まったままだった。
先ほどのアクセリオのような、激烈な反応を返す者はいない。
「その二つの和解さえ成れば、リューグラム卿とのことは私が責任をもって、必ずや何とかしてみせよう。五司徒としての
「――聖会との和解……念のため聞いておきましょうか。具体的にはどのような方策をもって臨むつもりなのかを」
最初に口を開いたのは、アーラオルドだった。
静かな口調とは裏腹に、彼の
「例のものを、聖会に返す」
「……例のもの、とは?」
「ハンブレーウス、分かっていよう。貴殿が以前、聖会より奪い、持ち帰ったもの――『
「認めぬっ!!!」
突然、アーラオルド・ハンブレーウスは立ち上がると、円卓を両の
ダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンッ!
「認めぬ認めぬ認めぬ認めぬ認めぬ認めぬーっ!!!」
先ほどまでの穏やかな態度が嘘だったかのように、アーラオルドは取り乱した。
立ち上がった拍子に倒れた椅子を何度も蹴りつけ、真っ赤な顔で胸を掻きむしりながら「認めぬ!」と絶叫し続けている。
しかし、イングレイを含めた他の四人は多少顔を
それはもちろん、イングレイが「
そして、アーラオルドの狂態が
「――いい加減に落ち着いたらどうです? ハンブレーウス殿」
しぶしぶ声をかけたのが、
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