第三章 第101話 うわさ2
「それじゃあ失礼しまーす」
「ありがとうねーセリカちゃん、気をつけて帰ってね」
「はーい」
時は、
場所は――ザハドにある、
一人娘のサブリナが、
専門の
山風亭もその例にもれず、店内にいるのは数組の
目の回るような忙しさも
「それにしても、最近どうもきな臭い気がしねえか?」
「ん? ……ああ、あれだろ? ――
「そうそう」
酒場と言えば、
情報と言えば、
当然商人たちも情報の
意図的に緩ませながら、相手からも何かしらの
「何でも、ピケに現れたって話じゃねえか。かの……『
「そうらしいな。
「そうなるとだ、どうしても
「あれ、とは?」
片方の商人が、
「あれっていやあ、あれだ――『
「ああ、あれか。かれこれ……
「ありゃあ、ひでえもんだった。あんな
「そうだったな……ってことはだ、望星教会が
「レアリウス、だろ? まったく
「そうだな。まあ復興する時は商機でもあると言えばそうなんだが、あの悲惨な状況を
その時、別の卓で飲んでいた商人と
「
「ん? 何をだ?」
「そのピケに現れた『
「マジでか!?」
「ああ、それも『
「南? ……ってことは」
話しかけられた方の二人は、思わずごくりと
割り込んた男は人差し指で、床をちょいちょいと指さして続けた。
「ああ、向かう先は恐らく――――――
「……やっぱりか」
二人のうちの片方は、最初こそ驚いた顔をしたものの、すぐに何かに納得のいったような表情で呟いた。
「いやな、最近ここら
「実際、望星教会の
「ってことはあれかよ……
「それでもって、戦場になるのは当然……」
「こうしちゃいられねえ!」
商人たちは大急ぎで卓上の飲み物を
すっかり静かになった店内で、テレシーグリッドは渋い顔をしてため息をひとつ
「ねえ、あなた」
「ん?」
グリッドは
「最近ずっと、
「……そうだな」
「心配だわ……」
「……ああ」
二人の
その
「あの子たちは確か、最初にピケに向かうって言ってたわよね」
「ああ、そこから
「……本当に戦場になるのかしらね、
「さあな。どのみち俺たちに出来るのは、いつも通りに店を
「……心配だわ」
もう一度同じ言葉を繰り返すと、グリッドは再び閉店作業に戻っていった。
実は、先ほどの商人たちのような会話は、初めて交わされているものではない。
何日も前から酒場で、取引の場で、個人的な噂話で繰り返されていた。
商人たちの会話は、当然同じ店内にいる他の客たちの耳にも入っている。
そして彼らが知人友人にまた聞きで話すことで、商人以外にも拡散されていく。
そんなわけで、ここザハドの
そして――――山風亭を出たセリカが自宅に辿り着くことは、なかった。
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