第三章 第100話 苦渋
地下へ通じる入り口のふたが
ちなみにこの部屋は、二階である。
「
「そうでしたか」
「また、全ての
「
「その
「聞きましたか? アル」
巫女は、彼女の
「はっ。既に外では
「
「
「……とのことです。
「ご協力感謝します、巫女様。そういうことでしたら、
巫女はアルメリーナをちらりと見た。
右の騎士は、それに小さく頷いて返す。
「そうしてください。
「アウレリィナ様、オレはここで
「そうだな。万が一の
ヴェンデレイオの問いに、アウレリィナが答えた。
「
「さて、
ヴェンがにやりと笑いかけると、アルメリーナは
アルの姿が扉の向こうに消えると、巫女はアウレリィナに向き直った。
「さて、アウレリィナ嬢。この
「提案、ですか?」
「ええ。あなた
「……伺いましょう」
そう言うと巫女とエリィナは改めて席に着き、話を始めた。
扉の向こうから時折、何かの物音が
(まったく我が
扉の前で
◇
「ど、どうしてですか!?」
私の声が部屋に響き渡ったのは、さっきの襲撃から三十分ほど
「とりあえず座ろう、
「でもっ!」
「私も分かりません! どうしてなんですか!」
私に加勢してくれたのは、リィナ。
この子はきっと、私と同じ気持ちのはずだもんね。
いきなりそんなこと言われて、承服できるはずがない。
部屋の中は、脱出する前と
テーブルのこちら側に私とエリィナさんと、リィナ。
向こう側には、
ドアのところでアリスマリスさんが立っているのも、同じ。
違うのは、ヴェンデレイオさんがいないことぐらいだ。
彼は自室かどこかに戻ったらしい。
もう家具で
そこからはマリスさんの
時々あった分かれ道のようなところも、マリスさんは迷う素振りも見せずにどんどん進んで行って、最終的に到着したのは一軒の民家だった。
歩いていたのは、そんなに長い時間じゃなかった。
五分くらい……
そこには誰もいなかった。
元々無人だったのか、何らかの理由でいないのかは分からないけれど、通路が繋がっているということは、まあそう言うことなんだろうと思った。
着いた先の一室で、私たち四人は待った。
何時ごろなのかは、全然分からなかった。
状況が状況だけに、雑談をするような気にもなれずにいたから、誰もほとんど話すことなく、ひたすら待つこと……こちらもせいぜい
そして彼に案内されるまま、その民家の玄関を普通に出て、普通に外をてくてく歩き、再びこの「
外の様子には、何の違和感もなかった。
ごく普通の、ちょっと入り組んだ裏通りって感じ? ――薄暗いのは少し怖かったけど、特に危険なこともなし。
店に戻ってからも、ホントに襲撃なんてあったのか疑わしいほどに、脱出する前の状態のままだった。
もちろん、私の知る限り……だけど、ね。
そして促されるままに、最初の部屋に戻り、席に着くや否や驚愕の提案がアウレリィナさんの口から飛び出たというわけなのだ。
「とにかく落ち着いて、座るんだ。葉澄」
すっかり私を葉澄呼びするようになったエリィナさんが、もう一度繰り返した。
そのことはいいのだ。
と言うか、もっと親しくなれたようで、
でも、それとこれとは話が別。
どうして……どうして予定通り、
力なく腰かける私に、エリィナさんが続けた。
「状況が変わったのだ。まさか君にまで追手がかかっているとは思わなかった」
「それは、そうですけれど……」
「これから君の希望通りザハドに戻るとしたら、再び襲われる可能性が非常に高いだろう。それは分かるな?」
「……はい」
「今回の襲撃は、
それは……きっとそうなのだろう。
でも……。
「
巫女様の呼びかけに、私はのろのろと視線を彼女に向けた。
「わたくしたちはこれから、ザハドに向かいます」
「……え?」
「わたくしたちが
「はい……」
「そして、聞けば
それも……言われてみればその通りだと思う。
でも、でも……。
「だったら、私たちも一緒にザハドへ――――」
「葉澄」
私の言葉を
「君の気持ちは痛いほど分かる。しかし……私たちでは足手まといなのだ」
「足手ま……そんな……」
「山吹さん。これからザハドは、非常に危険な状態に陥る可能性が高いのです。道中だけなら、あなた方を護衛することくらいは出来ましょう。しかし、着いてから
そんな……そんな……それなら。
「それならせめて、ここで――ピケで待てば……」
「ここは危険だ。今回襲撃があったことでも分かるが、私たちの動向は既に
「……」
「山吹さん、八乙女さんたちはわたくしたちが必ず、あなたの元へお連れします。そう長くお待たせすることは、きっとないでしょう。定期船が来るのはまだ
――この状況で……私に
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