第三章 第99話 突発的事態2
「
「
「何者ですか?」
「
一瞬のうちに、
アリスマリスさんが、何を思ったか素早く部屋を出て行った。
私とリィナは、ぽかん。
すると、エリィナさんが
「もしかして……」
「何か心当たりがあるのですか?」
「ええ、
そう言えば、巫女様たちとの話が始まる前に、エリィナさんが何か言いかけていたことを、私は思い出した。
「以前、ザハドの
「
「レアリウスが
そう言って、エリィナさんは私の顔を見た。
「――――
「……はい?」
さっきからまともに反応できずにいる私をよそに、巫女様が言った。
と言うか今エリィナさん、私を「葉澄」って……。
「ならば相手はレアリウスということですね」
「恐らくは」
「山吹さん」
「は、はいっ」
「何か狙われるような心当たりは、ありますか?」
巫女様の問いかけに、私は必死の思いで記憶をたどる。
たどりながら(こんなにのんびりしてていいのかな)などと妙に冷静に考えつつ。
でも……。
「ない、と思います。私が狙い……って、私をどうしようと?」
「どうなのでしょうね。あなたを
「けっ!?」
「
「
女性に引き続いて、今度は男性の
素早く答えたのは、エリィナさんだ。
「あります。しかし……どちらも
「ちょ、ちょっと! 皆さん!」
あんまりみんなが落ち着き払っているので、私は思わず声を上げてしまった。
だって……狙われてるの、私かも知れないんでしょ?
視線が一斉に私に集まる。
「どうして皆さん、そんなに落ち着いてるんですか!? その、レアリウスって言う人たちが侵入してきたんですよね!?」
「その可能性が高いな。そして、狙いは君」
「じゃあ!」
相変わらず
しかもさっきから
ちょっとだけイラっとする私。
「は、早く逃げるなり何なりしないと!」
「まあ落ち着きたまえ、葉澄」
「おっ、落ち着くって!?」
どう考えても緊急事態のはずなのに。
思わず噛みつきそうになる私を、エリィナさんは手で制した。
「気持ちは分かるが、ここは大丈夫だ」
「え……?」
「ここは
「――
突然ドアが開くと、さっき出て行ったマリスさんが戻ってきて言った。
彼女の後ろには、初めて見る男の人が立っている。
「ヴェン、調子はどうだ?」
「ご心配おかけしました。万全とは言えませんが、大丈夫です」
ヴェンと呼ばれた男の人は、包帯のようなものでぐるぐる巻きになっている左腕を軽く叩くと、エリィナさんに頭を下げた。
多分この人が、
左腕を斬り飛ばされたって聞いたけど……
「そうか。まあ大丈夫とは言っても、のんびりしていられる状況でもない。巫女様」
「はい」
「ご助力、願えますか?」
「もちろんです」
「ありがとうございます。葉澄」
「は、はい」
「賊はこの部屋を拠点にして、掃討する。君とリィナは念のため、マリスについて先に脱出して欲しい」
「脱出?」
「ああ」
エリィナさんは、部屋の隅にある
「そこから地下へ、そして通路を通って別の建物に出られるようになっているんだ。マリス」
「はい」
「
「かしこまりましたわ」
何だろう、この人たちの
決して油断しているようには見えないけど……それだけ自信があるってことか。
でも、掃討するって……敵は十人以上なのに、私とリィナとマリスさんが抜けたら、残るのはエリィナさんとヴェン?さん、あとは巫女様たち三人だけでしょ?
半分の人数で大丈夫なんだろうか。
すると今度は、巫女様が口を
「エミ」
「はいはい」
「山吹さんたちを護衛しなさい。脱出先で待機すること。いいですね?」
「
ええっ!?
この、男の従者さんも私たちについてくるの?
何か……何か、ちょっと
それに、エミって女性の名前っぽいけど、どう見ても男の人だし。
「あ、あのっ!」
「何でしょう」
「何だ?」
私の言葉に、エリィナさんと巫女様がハモって
「私が言うのも何なんですけど……そんなに少人数で大丈夫なんですか?」
「大丈夫、とは?」
「だって、敵は十人いるんですよね? それなのにこっちは……」
「ああ」
二人は口角を上げた。
エリィナさんは、不敵な笑みを。
巫女様は、例の
「大丈夫さ。私もヴェンもな」
「恐らくですが、アル
「お任せください」
女性の従者の人が、生真面目な顔で答えた。
アルって……こっちは何となく男の人の名前みたいだけど、
「では移動を始めるんだ。リィナ」
「はっ、はいっ!」
「分かっていると思うが、マリスは日本語が全く分からない。葉澄と一緒に言葉の仲立ちをよろしく頼むぞ」
「分かりました!」
いつの間にか、マリスさんが家具を動かして床の脱出
少し大き目な床下収納のふたのようなものを
「では私が先に行くから、ついてきてね」
そう言うと、マリスさんは設置されている
私とリィナはお互いに顔を見合わせながら、おっかなびっくり、足を梯子にかけたのだった。
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