第三章 第94話 アウレリィナの記憶 ―4―
神妙な顔でユーゴ様が口にした願いを、グリンデア様――
つまり――御屋形様はユーゴ様に
もちろん、
以前明言されていたように、
恐らくこのことを予見した上で、御屋形様はユーゴ様を
決して
――そして私は、ユーゴ様たっての希望によって、彼が
◇
御屋形様の
御屋形様とユーゴ様が向かい合って立つのを、奥様であるルドミラヴィカ様と、奥様の腕の中で眠るジュネヴィーラ様、その横に立つグラナバルニア様、そして私――アウレリィナが見守っている。
今、この時ばかりは完全にこの六人だけ。
前当主であるグリムロータス様でさえ、いらっしゃらない。
一時的な貸与とは言え、形としては
私は少しの
「ユーゴよ」
「
「ただいまより、
「はい」
「未来を視ることのみ、禁ずる。分かったな」
「はい」
ユーゴ様は、
彼が知りたいことを視るのに、確かに未来は必要ない。
当然、
ユーゴ様の答えを聞くと、グリンデア様は
その上には、いつのまにか
「
「
ユーゴ様も御屋形様と同じように、両手を差し出した。
すると……何とも不思議なことに、
そして、ユーゴ様の掌に到達したところで、その輪郭がどんどん
そのまま、誰一人として
最初に動きを見せたのは、ユーゴ様の両手の上の空間だった。
先ほど消え失せてしまった
現れたそれを右手で握ると、ユーゴ様はグリンデア様ににっこりと微笑み、深々と一礼した。
グリンデア様も、笑顔を以って応える。
――これで、
そう、たったのこれだけなのである。
これは
拍子抜けするほどに
逆に言えば、所有者が譲ろうとしなければ、例え手にしたとしてもその
それに、例えば短い時間のこととは言え、目の前で起きた現象はとても不思議で、なおかつ
とにかくこれで、一時的なものにせよ、ユーゴ様は
「
「はい」
という
◇
そして――
恐らく
表面上は、少なくとも大きな変化はないように見えた。
しかし、何と言えばいいのか自分でもよく分からないのだが、彼の
ユーゴ様は元々イルエス家の縁者として扱われていたので、特に領政などに関わることはなかった。
では何をしているのかと言えば、先述の通り私と
時に私や御屋形様、ご家族に遠い日本の話をしたり、
それは養子となった
しかし
――
既に私の
屋敷にあった魔法関連の
アムジール領の二大都市である
エレディールの
一説によれば、
そんな恐ろし気で気後れしてしまうような場所に対しても、イルエスの名はとても有効らしい。
具体的な遣り取りは不明だが、最終的にユーゴ様は、単身でのエリュアスコールへの
◇
留学から戻ったユーゴ様は、何か明確に
ある日の午後、いつものように語学訓練を終えた
そして、二人きりとなった彼の私室で、とうとう私は知ることになった。
――
「見ててよ、エリィナ」
ユーゴ様は大き目の
それはかつて彼が転移してきた時に、共にやってきたものとは別で、
机の上には、
転がらないように
そして、
ユーゴ様が指さしているのは、魔石の三角の
言われた通りじっと凝視していると……何と、三角形の
少し離れたところにある花瓶の姿が、ぼんやりとした
そして次の瞬間。
魔石で
側卓の方を
つまり――――
「――
にっこり笑うユーゴ様。
言葉を失う私に、彼は続ける。
「いや、正確に言えば
「転移交換……」
まさか実在していたとは……!
「
サンシェリクというのは、先述したアムジール家の当主であるサンシェリク・シュニルド・アムジール様のことだ。
「だから本来、この魔法には特別な三つの魔石が
「あ、ああ……」
驚きのあまり、私はさっきからまともな言葉を口に出来ずにいる。
魔法そのものもそうだし、ユーゴ様の言う古代機械のことなど初耳だ。
どれくらい離れて使用できるのか知らないが、もし本当に離れた場所同士で物を送りあえるとしたら……計り知れないほどの価値があるだろう。
「この魔法を習得するために、エリュアスコールへ行ったのか?」
「まあ、そんなとこだね」
「一体、何のために?」
「
ユーゴ様は突然、
同時に、彼の瞳に暗い
「俺はね、エリィナ――――――父親を殺そうと思うんだ」
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