第三章 第92話 アウレリィナの記憶 ―2―
突然現れた
――その少年こそが
◇
当時のイルエス家当主である、
――少年が現れることは、既に
だからこそ御屋形様は、あのような時間帯にグリンデア様と私を執務室に呼んだのだと理解した。
グリンデア様の驚きようからして、私と同じようにこの場で起きることを知らされてはいなかったようだ。
……それにしても、目を覚ました時のユーゴ様の
と言うのも彼が執務室に現れてから、
ともあれ、私たちにとって全くの謎に包まれた少年との生活が始まった。
それと……最初から私は彼のことを、
だからその時までは、呼んでいたように思い出すことにする。
◇
今考えれば当然のことだったのだが、ユウゴとの
何しろ彼とはまったく
幸いだったのは、ユウゴに
いや――だからこそ
ともかく、最初の
それまでは暴れることこそなかったが、極度の混乱状態に
それも無理からぬことだと、今は理解できるし、
そうしてお互いに数々の
まず、彼の
年齢が
夜遅くに
そして彼には、御屋形様によって今回起きた
御屋形様自身も、正確な
それは
当時のことは
今の私は学んで知っているが、五百年前と言えば
現在のエレディール
そして当時の
つまり、その頃に我が
五百年と言えば決して短い時間ではないはずなのだが、
――まあヴァルクス家の歴史についてはともかく、不幸にも転移させられてしまったユウゴ少年は、イルエス家で生活することになった。
徐々に打ち解けてきたとは言え、最初のころは
それでもユウゴは、残してきた母親のことを
同じように親元を離れている私は、そんな彼の思いを
グリンデア様が
同時に、私も彼の
正直なところ、私はその必要性をあまり感じていなかったのだが、どういうわけか前当主であるグリムロータス様に強く
幸い、
私とユウゴは、必然的に共にいることが多くなった。
お互いの言葉を学びながら、話はその
聞けば彼のいた
その代わりにと言うのだろうか、ユウゴのいた世界では
私は、
彼の話す、日本という国に。
何百人という人を乗せて
ユウゴによれば、彼の
このような大きな
いつか、足を踏み入れてみたい。
この目で確かめてみたい。
そんな思いは、私の日本語の会話能力を飛躍的に進歩させた。
まあ
そして、ユウゴの
私の
元々
しかし、例え何らかの
少なくとも実際に、かの世界に
そうして年月は過ぎ、家督相続と同時にご
その頃には、私とユウゴは、何十年来の
ただしそこに、いわゆる
どうしても何かの言葉に当てはめるのなら、やはり「
表向きはすっかりこの地に馴染み、イルエス家の縁者のような扱いにも慣れたように振る舞ってはいるが、時折見せる陰のようなものを見る
しかしそれは、恐らく消えないままの望郷の思い、母親への思慕の念ゆえのもの。
つまるところ、根本的にはどうしようもないものなのだ。
私はどうにもそれが歯がゆかった。
そしてある日、グリンデア様――御屋形様は驚くべき決定をされたのだ。
それは――――――――
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